例えばエレーン・クン医師は、彼女の元を訪れたある患者がソーシャルメディアの有名インフルエンサーのアドバイスに従って髪を洗わず、代わりにオリーブオイルだけを塗っていたという件について説明したことで、彼女自身がTikTokで有名になった経緯を語っている。
クン医師は、このインフルエンサーの主張には根拠がなく、髪を洗わないと汗や皮脂、空気中の汚染物質を洗い流すことができず、それらをオリーブオイルといっしょに体内に取り込むことになり、そのオリーブオイルが顔に付着するためにニキビができやすくなるのだと、患者に説明した。
もう1つ、しばしばオンライン上で誤って奨励されているありふれた例としては、日焼け止めのSPF値が高いほど必ず肌にとって良いというものがある。しかし、皮膚科医で科学者でもあるヨラム・ハース博士は、日焼け止めの主な目的は有害な紫外線を遮断することだと書いている。
例えば、SPF30はUV-B(紫外線B波)を約96.7%遮断し、SPF50は98%遮断する。だが、その1.3%の保護効果の差には「化学物質の追加という代償をともなう。可能性として、よりSPF値が高い日焼け止めは、より肌に優しくないおそれがある」とハース博士は説明する。
肌に触れる化学物質が増えると、ニキビが増えたり、肌の耐性が落ちたり、肌が過敏になることがあるため、人によっては実際にSPFの高い製品を継続的に使用することは避けたほうがよい場合もある。
また、よく言われている説の中にも危険なものがある。
例えば、多くのソーシャルメディアの識者たちが「皮膚の色が濃い人は日焼け止めは必要ない」と主張している。べイラー医科大学皮膚科助教授のジーナ・ナワス博士は、これは単純に真実ではないと説明している。
「皮膚の色が濃い人も日焼けすることはあります。ただ、皮膚の色が薄い人と比べたら日焼けしにくいというだけで、さらに長く太陽の光に当たっていれば日焼けします。皮膚の色が濃い人は、日焼けしても必ずしも肌が見てわかるほど赤くなるというわけではありませんが、痛みや皮むけを経験することはあります。紫外線対策を何もしないままでいると、皮膚の色が濃い人でも、肌の老化が早まったり、日焼けによる炎症が起きたり、皮膚がんのリスクが高まることがあります」