2. 気力が尽きて起こる燃え尽き
以前なら、読み聞かせをして我が子を寝かしつけ、午後は一緒に遊び、共に笑って楽しく過ごしていた親がいるとしよう。しかし今では、穏やかに過ごしていても疲労感が抜けない。また、子どもの弁当を詰め、宿題を手伝い、家庭を切り盛りするなど、やるべきタスクはこなしているものの、子どもとのあいだに距離を感じ、疲労困憊しているというケースもある。こうした子育て中の燃え尽きは、子どもを育てる上でやるべきことがあまりに多く、得られる支援や手持ちのリソースを上回っている時に起こる。
たとえば、学習障害がある子どもを育てている母親がいたとしよう。母親を支援する強固な枠組みが用意されていて、ストレスのはけ口があれば、「充電」する方法を見つけられるかもしれない。だがこの場合でも、ストレスが支援を上回ると、心は燃え尽きにむしばまれてしまう。
これは、気力が尽きる形の燃え尽きだ。極度の疲労があまりに深く根付いてしまい、もう何も与えられるものがないように感じてしまうのだ。生活や仕事で得られる喜びは色あせ、感情は失われ、周囲を取り巻く世界から切り離されたような思いにとらわれてしまう。
慢性的なストレスにさらされ、タスクから離れる時間もなく、休憩も最低限しかとれない状況では、徐々に活力やレジリエンス(回復力)が奪われていく。こうした状況が続くと、慢性的な疲労感、やる気の喪失につながり、ひどい時には頭痛や不眠などの身体症状に現れることさえある。