サイエンス

2025.03.09 13:00

「鳥類進化の歴史」を書き換える、新たに発見された1.5億年前の化石

Creaturart Images / Shutterstock

Creaturart Images / Shutterstock

新たな化石が発見されるたびに、この星の叙未知なるページが開かれる。2025年2月、中国から舞い込んだ常識を覆す新知見は、鳥類進化の章の中核部分を書き換えた。

恐竜的な特徴と、現生鳥類の特徴をあわせ持つ、1億5000万年前のバミノルニス・ジェンヘンシス(Baminornis zhenghensis)の化石が、福建省にあるジュラ紀後期の地層から発見されたのだ。

ジュラ紀の鳥類を代表する種といえば、1世紀半以上にわたって、始祖鳥(Archaeopteryx)だけだった。しかし、バミノルニスはこの常識を覆し、鳥類の初期進化のより多様で複雑な全体像を浮き彫りにした。

明らかになったのは、さまざまな形質が予測のつかない形で出現・消失・再出現を繰り返す、「モザイク進化」と呼ばれる現象だ。ここから、恐竜から現生鳥類への移行に関して数々の新たな洞察を得ることができる。

バミノルニスの驚異の化石

福建省政和(Zhenghe)県の岩石露頭から発見されたバミノルニス・ジェンヘンシスは、ジュラ紀にすでに尾の短い鳥がいたことを確実に示す、初めての証拠だ。誰もがよく知る始祖鳥は、爬虫類的な長い尾をもっていた。一方、バミノルニスは尾端骨(びたんこつ:複数の尾椎骨が癒合して1つになった骨)があり、これが、扇型に開く尾羽を支えていた。

この適応形質は、現生鳥類の効率的な空気力学特性の実現に不可欠なものだ。重心を前方に移すことで、より機敏に飛翔できるようになったのだ。

古生物学者の推定によれば、バミノルニスの体重は約100~130gで、ウズラと同程度だった。この時代で最も小型でありながら、最も高度に進化した初期鳥類の1つだったのだ。

バミノルニスに見られるさまざまな特徴は、実に驚くべきものだ。肩帯と腰帯は現生鳥類と顕著な類似を示す一方、前肢は依然として原始的で、各部分の構成比は恐竜に似ていた。まさしく典型的なモザイク進化であり、身体の部位によって進化のスピードがまちまちだったことが見て取れる。

今回の発見は、鳥類はこれまで考えられていたよりもずっと早い段階で多様化したことを示唆しており、あわせて飛翔に不可欠な適応形質が、いつどのように出現したのかについても新たな問いを投げかける。現生鳥類の形質の起源年代は、従来の定説よりも約2000万年早まったと研究者たちは主張している。

始祖鳥の再検討

始祖鳥は、150年以上にわたって、鳥類進化の代名詞だった。ドイツのゾルンホーフェンにある石灰岩地層から発見された、この目を奪われるような化石は、長きにわたり非鳥類恐竜から鳥類への移行段階の象徴とされてきた。

始祖鳥のイメージ Dotted Yeti / Shutterstock
始祖鳥のイメージ(Dotted Yeti / Shutterstock.com)

羽の生えた翼と、爬虫類的な長い尾をもつ始祖鳥は、科学界を魅了し、ダーウィンの進化理論を支えた。しかしその後、始祖鳥の形態の詳しい分析により、見た目だけではわからなかったことが明らかになってきた。

始祖鳥の長く骨が通った尾は恐竜の名残であり、バミノルニス・ジェンヘンシスの現生鳥類に似た短い尾とは対照的だ。このことが、進化系統樹における「最初の鳥」という位置づけの再考を促す。

最近の研究では、始祖鳥を「真」の鳥とみなすべきか、それとも「デイノニコサウルス類の恐竜」の近い親戚とすべきか、という議論が展開されている。始祖鳥もまた、鳥類と非鳥類の形質が混じりあう、複雑な移行段階を体現しているのだ。

次ページ > 現生鳥類のルーツはジュラ紀にまでさかのぼる

翻訳=的場知之/ガリレオ

タグ:

続きを読むには、会員登録(無料)が必要です

無料会員に登録すると、すべての記事が読み放題。
著者フォローなど便利な機能、限定プレゼントのご案内も!

会員の方はログイン

ForbesBrandVoice

人気記事