サイエンス

2025.03.09 13:00

「鳥類進化の歴史」を書き換える、新たに発見された1.5億年前の化石

Creaturart Images / Shutterstock

バミノルニスの発見により古生物学者は、ジュラ紀の鳥類相に関する従来の説の再考を迫られている。始祖鳥は、新たに形成されつつある共通見解においても依然として非常に重要な存在だが、それは、かつて多様性を誇りながら歴史の闇に消えた初期鳥類の数多くの系統のうちの1つにすぎないのかもしれない。

始祖鳥とバミノルニス・ジェンヘンシスに見られる対照的な形態の特徴から、飛翔に関連する適応形質の進化は、直線的なプロセスではなく、むしろその経路は幾度となく枝分かれし、実験や急速な多様化を特徴としてきたことがうかがえる。

単体で見つかった「名なしの初期鳥類」の叉骨

バミノルニス・ジェンヘンシスが発見された調査で、研究チームは別の叉骨も発見した。この化石は、別種の初期鳥類のものと考えられている。

現生鳥類において、叉骨は飛翔を実現する構造の主要部分の1つだ。筋肉が付着するこの骨は、翼の動きの生体力学に貢献している。しかしこの化石は、単体で見つかったことから、研究者たちはその持ち主を新種と断定できずにいる。

最先端の幾何学的形態解析と系統解析によれば、この叉骨は真鳥形類(Ornithuromorpha)のものである可能性がある。真鳥形類は、のちの白亜紀に、現生鳥類の膨大な多様性を生み出したクレード(分岐群)だ。

この叉骨がバミノルニスとともに発見されたことは、ジュラ紀の鳥類が、これまで考えられていた以上に豊かで複雑な生態系の一員であった可能性を示唆する。そこからは、鳥類の複数系統がそれぞれ、実験を行ないながら飛翔への異なる適応を獲得し、古代の生態系のなかで共存しつつ競争していた、という魅惑的なシナリオが垣間見える。

謎めいた叉骨の発見は、現生鳥類の特徴の進化が、白亜紀前期よりも前に始まっていたという主張を支持するものだが、それに加えて、今の私たちが知る化石記録はスナップショットにすぎないことを思い出させてくれる。つまり、かつての直線的な進化モデルが示唆するものよりも、はるかに複雑な進化のタペストリーの、ごく一部だけを捉えたスナップショットなのだ。

鳥類進化における新章

これらの発見は、鳥類進化についての私たちの理解に激変をもたらした。バミノルニス・ジェンヘンシスとともに、謎めいた叉骨を含め、ほかの鳥翼類の痕跡が発見されていることは、現生鳥類のルーツが、私たちの想像を超えて、ジュラ紀にまでさかのぼることを示唆する。

これらの発見は、進化生物学的に見て、過去への新たな扉を開くものだ。どんなプロセスや淘汰圧が、現生鳥類の飛翔や洗練された動き、そして比類なき多様性を最終的に生み出したのかについて、私たちは再検討を迫られている。

端的に言えば、バミノルニスや同時代の初期鳥類は、進化は直線的に進むのではなく、試行錯誤と適応が生み出す枝分かれの繰り返しのネットワークであることを語っている。

新たな発見が舞い込むたびに私たちは、生命の歴史の複雑な物語について、理解を一歩深める。そしてその物語は、数億年の歳月を経たいまも紡がれ続けている。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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