海洋生物の化石を見つけられるのは、沿岸や水中の堆積層だけだと思っている人もいるかもしれない。しかし、直感に反するようだが、広大で乾燥した砂漠は、古代の海の遺物を探すのに最適な場所であることが証明されつつある。
このことは、最近のある発見によっても裏づけられている。乾燥した風景が広がるペルーのピスコ盆地で、900万年前に生息していたホホジロザメの祖先コスモポリトドゥス・ハスタリス(Cosmopolitodus hastalis)の化石が、良好な保存状態で発見されたのだ。
実際、多くの砂漠はかつて、豊かな海洋環境だった。そして多くの砂漠が、先史時代の生態系や、地質学的な時間尺度で海岸を砂漠へと変えたプレートテクトニクスに関する理解を書き換える役割を果たしてきた。
ピスコ盆地は古代の海底だった?
ペルーのピスコ盆地は、世界屈指の化石産出地として、生物学者、地質学者、化石愛好家の注目を集めている。太平洋沿岸に位置するこの盆地の堆積層には、数百万年前の海洋生物の類いまれな記録が保存されている。
コスモポリトドゥス・ハスタリスも、この堆積層で発見された。漸新世後期から更新世前期の海に暮らしていたこの種の発見は極めて重要だ。なぜなら、乾燥した風景と、劇的に切り立った海食崖を特徴とするこの地域で、古代には多様な生物が生きていたことを直接のぞき見ることができるためだ。
ピスコ盆地の地質学的歴史は、ダイナミックであると同時に複雑だ。数百万年にわたる地殻変動によって、海底が隆起し、現在の広大な陸地が現れた。そして、かつては海洋環境に堆積していた化石質の堆積物は、ほとんど乱されることなく残されている。
コスモポリトドゥス・ハスタリスの保存状態は、ピスコ盆地のユニークな条件を証明している。堆積層が急速に形成されたことと、生物学的かく乱が最小限だったことにより、海洋生物の化石が最高の状態で保存されたのだ。

砂漠は、古代の海のタイムカプセル
古代の海洋生態系の遺物を探そうとする際に、砂漠を無視することは、かつては容易な判断だったかもしれない。しかし科学界は今、サハラ砂漠やアタカマ砂漠、ゴビ砂漠などの広大な乾燥地域が、長らく水没していた海底の証拠を保存するタイムカプセルであることを知っている。
海から砂漠へというこの変化で、中心的な役割を果たしたのがプレートテクトニクスだ。数百万年にわたるプレートの緩やかな移動により、地球の地形は劇的に変化した。深い海洋盆地だった地域が隆起して砂漠となり、かつて海の底にあった堆積層がむき出しになった。