北アフリカのサハラ砂漠を例にとってみよう。世界最大の砂漠だが、海洋生物の化石を含む広大な堆積層が発見されており、この場所がかつて海だったことを証明している。
同様に、極度の乾燥と快晴の空で有名なチリのアタカマ砂漠も、かつては古代の海岸線の一部だった。中国北部からモンゴルにわたって広がるゴビ砂漠も、恐竜から海洋無脊椎動物まで、驚くべき化石が発見されており、やはり古代の海によって形づくられたことを示している。
これらの砂漠が、海洋生物の化石の優れた貯蔵庫となっている理由の1つは、保存条件が年間を通じて非常に良いことだ。水分が少なく、生物活動も少ないため、化石を含む堆積層の劣化や浸食が最小限に抑えられている。
さらに、堆積物が岩に変化する急速な石灰化により、化石の構造が細部まで保存され、過去の海洋生態系を驚くほど正確に再現できる。
砂漠で発見された、巨大な海洋生物の化石
砂漠が歴史上最も重要な海洋生物の化石をもたらすかもしれないと考えることは、もはや少数派の発想ではなく、化石調査の急成長分野だ。ピスコ盆地での発見以外にも、世界中の砂漠から驚くべき発見が報告されている。
例えばサハラ砂漠では、白亜紀までさかのぼるアンモナイトや複雑な無脊椎動物の広大な化石層が発見されている。これらの発見は、かつて存在した「テチス海」で繁栄した海洋生物に関する重要な手掛かりをもたらしている。テチス海は、ローラシア大陸とゴンドワナ大陸という2つの超大陸を南北に隔てていた。

アタカマ砂漠では、海生爬虫類や魚類の化石が同定されており、気候が大きく変動した時代の生物多様性を垣間見ることができる。これらの化石は、海洋生態系が地球規模の環境変化にどう対応したかについて、理解の空白を埋める助けになった。
恐竜の発見で有名なゴビ砂漠でも、古代の海洋生物の化石が発見されている。一帯の地層のおかげで、化石の年代を驚くほど正確に特定できるだけでなく、劇的な環境変化があった時期に、海洋生態系と陸上生態系がどのように相互作用していたかも研究できる。
開封を待つタイムカプセル
砂漠はそのユニークな地質学的歴史により、自然のタイムカプセルとして機能している。多くの場合、ほかの環境より無傷な状態で、古代の海の遺物を保存しているように見える。
それらは、生物学者や古生物学者にとって貴重なものだ。数百万年にわたる海洋生物の進化について洞察をもたらし、遠い昔に絶滅した種の遺物をどこで探すべきかについて、私たちの先入観に疑問を投げ掛ける。
そして、地球の歴史は緑豊かな環境だけでなく、一見不毛な荒涼とした砂漠にも刻まれていることを思い出させてくれる。