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国内

2025.03.11 14:30

世界を変える30社:次世代インパクトスタートアップ2025年版

イラストレーション=ブラチスラブ・ミレンコビッチ

女性の高度IT人材を育成する「真の目的」

やまざきひとみ|Ms.Engineer

2021年、やまざきひとみが創業したMs.Engineerは、女性特化型のITエンジニア育成事業を展開している。高難度の授業と演習を短期間に繰り返し行うシリコンバレー発祥の「コーディング・ブートキャンプ形式」なる手法を導入し、これまでに350人以上のエンジニアを輩出してきた。卒業生の平均年収は484万円と日本の女性平均より170万円高く、50代での転職で650万円という事例も生み出している。
 
特徴は実践重視のカリキュラムだ。座学での技術習得に加え、AIを活用する技術教育やチーム開発、デモデイでの成果発表を組み込み、全プログラムをオンラインで提供。これによって未経験者をITSS(ITスキル標準)レベル4相当の高度IT人材に育成する。

創業のきっかけはコロナ禍だった。女性の失業率が男性の3倍に達するなか、IT業界では人材不足が続き、リモートワークの環境が整備されていることに着目。正規雇用の女性エンジニアを増やすことで、ペイギャップ(男女間の賃金格差)解消のみならず、「労働市場の構造の矛盾を根底からひっくり返すことができる」とやまざきは語る。

事業を通じてこの格差の大きさを痛感するのは、地方だ。地方で働く女性は2000万人以上だが、平均年収は東京より80万円低く、正規雇用比率も45%程度と「賃金格差の中心地になっている」。

今後、年間数千人規模を育成し、現在16%とOECD最低水準にある日本の女性エンジニア比率を30%に引き上げる目標だ。


やまざき・ひとみ◎1984年生まれ。2007年にサイバーエージェント入社。『アメーバピグ』立ち上げプロデューサーなどを経て、15年に独立。「C CHANNEL」編集長や、PRマーケティング、コンテンツ制作を行うアタラシイヒの代表に就任後、21年にMs.Engineerを創業。


児童虐待をICT技術でサポート

髙岡昂太|AiCAN

年間21万4843件。日本の児童相談所における虐待相談の対応件数である(2022年度、こども家庭庁調べ)。過去10年間で約3倍に増加した一方、現場はICT化が進んでおらず、職員の異動による経験知の喪失も頻発。オペレーションは限界を迎えており、「忙しすぎて課題を言語化する時間すらない」という声が聞こえるほどだ。

15年以上にわたり児童福祉現場に携わってきた髙岡昂太は、この課題を解決するためAiCANを創業。最先端のICT技術と現場の経験知を融合し、自治体の児童相談所や子育て支援課・母子保健課など、子ども虐待対応の最前線に立つ機関をサポートしている。

主力サービスの「AiCANサービス」は、記録などの業務をデジタル化するアプリと、職員が適切な判断を行うためのデータ分析や研修支援をセットで提供。実証実験では、児童相談所の業務の半分を占めていた記録作業時間を38.1%削減し、職員は本来の役割である子どもや家庭との面談により多くの時間を充てられるようになった。

東京都港区や群馬県高崎市をはじめ、これまで10の自治体が導入。 24年7月にはシリーズAで2.1億円の資金を調達し、「早期に支援を届けたい」という思いからNPOではなくスタートアップの道を選択した髙岡の思いが着実に実を結びつつある。ミッションに掲げるは、「子どもを守る仕組みと価値観をアップデートする」。その実現に向け、今後は幼稚園・保育園、教育相談、医療機関へ展開を進めていく。


たかおか・こうた◎2006年明治大学卒業。11年東京大学大学院臨床心理学コース博士課程修了。教育学博士、臨床心理士、公認心理師、司法面接士。海外大学院のポスドク、産総研人工知能研究センター主任研究員を経て、20年AiCANを設立。


編集=山本智之、川上みなみ|4P・5P 文= 川上みなみ(AgeWellJapan)、大崎 真澄(レコテック)、大久保 崇(Ms.Engineer / AiCAN)、写真=若原瑞昌

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