「GAFAMの次」を生む革命をもたらすと言われている、人類と地球のためになる新・行動指針となる「インパクト」。日本における同時多発的な動きは、世界のインパクト・エコノミーの潮流のなかでも「独自の動き」として注目を集めている。
「インパクトスタートアップしか成長しないと思うんですよ」
そう話すのは、スペースデブリ(宇宙ごみ)除去など衛星軌道上サービスを提供するアストロスケールホールディングス創業者兼最高経営責任者(CEO)の岡田光信だ。同社は、衛星の寿命延長、故障機や物体の点検、衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去、既存デブリの除去など革新的な取り組みを行なっているインパクトスタートアップだ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)や米国宇宙軍、欧州宇宙機関(ESA)、英国宇宙庁(UKSA)などの先駆的ミッションにも取り組む、軌道上サービスの世界的リーダーである。日本、英国、米国、フランス、イスラエルとグローバルに事業を展開している。
同社は2013年の創業以降、シリーズGまで資金調達を行い、累計調達額445億円に上った。そして、24年6月、IPO(新規株式公開)を実施。上場日の初値は公開価格(850円)を大きく上回る1281円。終値(1375円)ベースの時価総額は1544億円で、企業価値10億ドル以上のユニコーン規模を誇る企業となった。インパクトスタートアップによる大型上場の瞬間だった。
そして12月には商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」のミッションにおいて、観測対象のデブリから約15mという民間企業がデブリに最も近い距離まで接近することに成功。「我々がデブリから約50mの距離に安全に接近・撮影に成功した後、国連で4回話す機会がありました。国連本部1階のエントランスルームにその写真が飾ってあります。それがより近づいたわけですから、非常に大きな一歩だと言えます」(岡田)。
インパクトスタートアップとは、岡田が理事を務めるインパクトスタートアップ協会によると、「社会課題の解決」を成長のエンジンと捉え、持続可能な社会の実現を目指すスタートアップだ。岡田が挑むスペースデブリに象徴されるように地球規模の課題、社会課題は多様化、複雑化している。気候変動、環境問題をはじめ、格差拡大、人種・男女格差、メンタル問題、生物多様性、高齢化社会が抱える問題など多種多様な課題が存在する環境下では民間主導での解決が不可欠で、イノベーションを起こしながら課題解決するスタートアップが「主役」となる。なぜ、インパクトスタートアップしか成長しないのか。岡田の返答はシンプルだった。
「『公共の精神』こそが、強烈な成長のドライバーになるからです。世界の変化を見ても、意思決定に『公共の精神』がある企業が資金調達、採用、営業を加速できる」
