「インパクトVC」の進化
日本では、未上場株式の投資残高が全体の3%と規模が小さい。しかし、同領域でも新規ファンド組成や大型化の新潮流が生まれている。23年10月に組成された慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)による202億円の3号ファンドを筆頭に、24年はさらに加速した。

300億円規模の新ファンドを組成する──。24年12月、国内外にインパクト投資を行うGLIN Impact Capitalが大型ファンド組成に向けて動き出した。同社は20年創業。二桁億円前半の1号ファンドでは、8社に投資し2社がすでにIPO。内部収益率(IRR)は33%に達し、同年設立のVCファンドでもトップクラスの成果を出しているという。「日本のグロース市場、そしてインパクトスタートアップのどちらにも厚みある。「最低でも時価総額300億円、500億円規模の時価総額が求められる。小型上場ではなく、機関投資家が投資できる規模で上場し、上場後も成長できることが求められる。ファンドを大型化し1件ごとの投資金額を上げ、長期的に支援をしながら、インパクトユニコーン、デカコーンの誕生に貢献していきたい」

インパクト投資の先駆者も新たな一歩を踏み出した。インパクト・キャピタル代表取締役の黄春梅と高塚清佳だ。二人は17年、新生銀行(現SBI新生銀行)グループにて、邦銀グループ初のインパクト投資チームを創設し、「子育て支援ファンド」を組成・運用。19年、新生インパクト投資を設立後、SIIF(社会変革推進財団)とともに、外部機関投資家11社を招き2号ファンド「はたらくFUND」を組成・運用。そして24年、独立し、同年5月に60億円規模のインパクト・キャピタル1号ファンドを組成した。最終的に100億円規模を目指す。同ファンドには、かんぽ生命、立命館大学が出資し、産学連携という点も特徴だ。新ファンドでは、「『人』の『Well-being』を追い求める」をテーマに、子育て、介護、医療、ヘルスケアといったふたつのファンドでの投資領域をさらに拡張していく。第一号の投資先は、ドローン開発と物流サービスを手掛けるエアロネクストだ。黄、高塚は「業界構造を変える『システムチェンジ』できるスタートアップに投資をしていく。システムチェンジに資するリーダーであれば、インパクト投資として経済性、社会性の観点から合理的でもある。資本市場に適切なタイミングで大きく『インパクトIPO』する企業を支援していきたい」と話す。
