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2025.03.06 13:30

市場規模3年で10倍!大企業も参入。世界が注目する「日本のインパクト・エコノミー新章」

イラストレーション=ブラチスラブ・ミレンコビッチ

拡張し続ける「インパクト投資」

環境や社会への好影響とリターンの両方を目指す「インパクト投資」。現在、世界のインパクト投資の投資残高は1.57兆ドル(約247兆円)で、前年1.2兆ドルから増加。日本のインパクト投資残高(23年度)も前年比約2倍の11兆5414億円、20年度(1兆3204億円)から10倍以上、市場規模が急拡大している。アセットクラス別国内投資残高では、融資が43%で最も多く、上場株式23%、債券20%と続く。非上場株式が多い(43%)、世界のインパクト投資市場とは異なる独自の流れだ。

世界、日本でインパクト投資推進を行うシブサワ・アンド・カンパニー代表取締役の渋澤健は「金融業界では世界から日本が2、3周遅れだと言われてきたが、インパクト投資については該当しない。世界から見ると『日本は面白い』と注目され、最先端で一緒に探索している。世界からは、メガバンクをはじめとした大手金融機関や大企業が真摯にインパクトに向き合っていることが新鮮に写っている」と話す。「ユニバーサルオーナー、アセットオーナーである生命保険会社の資産運用は投資期間が長期に及び、インパクト投資との親和性は高い。当社の重点取り組みテーマである1. 環境保護への貢献、2. Wellbeing向上、3. 地域と社会の発展を実現させるためには、現在直面しているさまざまな社会課題解決が必要不可欠。我々は現在、上場株式、プライベートエクイティ(未公開株)、不動産と幅広いアセットクラスでインパクトの創出を企図している」

春名貴之◎かんぽ生命保険専務執行役。農林中央金庫、現三井物産オルタナティブインベストメンツを経て、2016年同社に入社し、21年4月より現職。市場運用部、オルタナティブ投資部、クレジット投資部の運用フロント部門全体担当役員。
春名貴之◎かんぽ生命保険専務執行役。農林中央金庫、現三井物産オルタナティブインベストメンツを経て、2016年同社に入社し、21年4月より現職。市場運用部、オルタナティブ投資部、クレジット投資部の運用フロント部門全体担当役員。

そう話すのは、かんぽ生命保険専務執行役の春名貴之だ。業界最大級60兆円の資産を持つ同社では、2016年以降、資産運用におけるサステナブル投資(ESG投資)の取り組みを本格化。22年にはインパクト志向の投資拡大に向けて独自のインパクト投資フレームワーク「インパクトKプロジェクト」を立ち上げるなどインパクト投資も積極的に取り組んできた。同プロジェクトでは、保育園みらいファンド、独立系運用会社のコモンズ投信、社会課題専門Ridiloverと組んだ国内上場株ファンドのコモンズ・インパクトファンド、VCファンドGLIN IMPACT CAPITAL、産学連携として大学VCで初のインパクトファンドを組成した慶應イノベーション・イニシアティブ3号ファンド、インパクト・キャピタルなどに資金を拠出。「大学がもつテクノロジーは社会課題を解決するイノベーションを起こす可能性があるものが多数存在する。慶應義塾大学、大阪大学、立命館大学と覚書を締結し連携の取り組みを進めている。また、上場株投資も行うことで、企業の成長ステージにわたりシームレスにインパクトを創出できる。インパクトKプロジェクト認証ファンドは23年度までに225.5億円の投資実績がある。25年度は500億円を目指す。30年度までには1000億円の投資残高を増やすことを考えている」(春名)。

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文=山本智之 写真=小田駿一

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