2. 説明責任を文化に組み込む
美しく作られたバリューステートメントを掲げながら、リーダーが自らの責任を果たさなかったために崩壊した企業は多い。原理原則のリストは、あらゆるレベルで強化されなければ意味がない。そしてその強化は、組織のトップから始まる。
ハイクラス転職エージェント、Cowen Partners(コーエンパートナーズ)のプレジデント兼パートナーであるショーン・コールは、長年にわたり、組織の基本理念に合った者を経営幹部に据えてきた。彼は、ミッションと価値観に深くコミットしたリーダーシップとチームこそが、長期的な成功を収めるのを見てきたと語る。そしてコールは、そのキャリアを通じて、「価値観によって動くリーダーシップは、セミナーで教えられるようなものではない」ことにも気がついた。
「人々は、誰かがそれを実践している姿を見る必要がある」とコールは言う。
気風はリーダーが決める。経営幹部が、表明された価値観に沿った厳しい決断を下すところを従業員が見れば、信頼と信用が強まる。企業のDNAに価値観を根付かせる最善の方法の1つは、価値観を、人材採用、業績評価、リーダーシップ開発に結びつけることだ。
昇進や、会議での賞賛、LinkedIn(リンクトイン)への投稿、全社的な表彰などを通じて、社員がコアバリューを体現していることが評価されれば、それは組織全体に対する強力なメッセージとなり、組織を超えたところにもそのメッセージは届く。
はっきりさせておきたいのは、説明責任とは、ミスを認めることでもあるということだ。会社が透明性を説きながら、厳しい話を避けるようであれば、社員たちはそれに気づく。価値観によって主導される強力な企業文化とは、完璧であるかどうかを問題にはしない。それは、自らの失敗を認め、軌道を修正し、コミットを続けるということなのだ。
3. 価値観について妥協することなく革新する
ビジネスは進化するが、コアバリューは不変であるべきだ。成長と変化は避けられないが、企業が、短期的な利益を追求して原理原則を放棄してしまうと、そもそも企業を成功へと導いた力を失う危険性がある。
コールは、何度もそうした挑戦を見てきた。「多くのリーダーにとっての最大の苦闘は、短期的な思考だ」と同氏は言う。「すぐに結果を出さなければならないというプレッシャーは常に存在する。しかし、長期的に繁栄する組織は、困難なときでも自分たちの価値観を貫き、無限のマインドセットを採用するものだ」
ナイキは、説得力のある事例を提供している。共同創業者のフィル・ナイトと、後のマーク・パーカーの下で同社は、イノベーション、パフォーマンス、創造性に焦点を当てた「無限のマインドセット」で運営されていた。彼らのリーダーシップは、短期的な勝利よりも、長期的な成長を優先する文化を育んだ。
しかし一部の業界関係者は、パーカーの引退後、意思決定がよりビジネスライクな内容にシフトしたと指摘し、ナイキの基本的な価値観が中心に据えられなくなりつつあるとの懸念を示した。
リーダーシップの移行時には、価値観が本当に組織に浸透しているのか、それとも、少数の重要な個人に依存していたのかが明らかになる。たとえ体制に変化があっても、自分たちの理念に忠実であり続ける企業こそが、強い企業であり続ける。