「膵臓がん患者では、我々の最新の結果が、各患者の腫瘍に存在するネオアンチゲンを標的とする個別化mRNAワクチンのアプローチをあらためて裏付けるものになりました」とバラチャンドラン医師は述べている。「もし膵臓がんでこれが可能ならば、理論的には他のがん種に対しても治療用ワクチンを開発できるかもしれません」
もっとも、この試験は対象患者数が少なく、免疫反応を示したのは半数にとどまるため、解釈には注意が必要だ。それでも膵臓がんは
5年生存率がおよそ13%と極めて低く、標準的な治療である手術や化学療法も効果が限定的で再発率が高いことを考えると、この結果は大きな期待を生む材料といえる。実際にmRNAワクチンによる効果が見られた8人のうち、追跡調査時点で6人には再発が認められなかった。
mRNAベースのがんワクチン技術は、新型コロナウイルスのパンデミックで広く知られる以前から研究が進められていた。膵臓がん以外にも、
皮膚がん、
腎臓がん、
脳腫瘍、
乳がんなど、さまざまなタイプのがんに対する臨床試験が行われている。
今回の膵臓がんにおけるmRNAワクチンの初期的成果を受け、260人を対象とするより大規模な
第2相試験がすでに進行している。患者は2つのグループに無作為に割り振られ、一方は手術後に従来の化学療法を受け、もう一方は手術に加えて個別化mRNAワクチンと免疫チェックポイント阻害薬を受ける予定だ。この研究は2029年に終了する計画だが、それ以前に複数回の中間解析が行われ、その時点で得られる暫定的な試験結果が公表される見込みだ。
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forbes.com 原文)