3本の海底ケーブルの損傷を受け、ドイツや北欧諸国などバルト海沿岸に位置する北大西洋条約機構(NATO)の加盟国は先月、同海の海上防衛を強化する共同声明を出した。しかし、海底ケーブルが3度も切断されて初めてNATOが腰を上げたのは、遅きに失した感もある。
海底ケーブルの切断は、ロシアと中国のローフェア(法を悪用した戦争)の戦略そのものであり、ロシアは実際、ウクライナ侵攻でこの戦術を使っている。NATOの加盟国と台湾は迅速に対応できるよう、法的な基盤を整え、地政学的・経済的に悲惨な結果を招かないようにしなければならない。
海底ケーブルは陸上局間の海底に敷設され、通常は電気通信信号や電力を伝送する。地球上には数百本もの海底ケーブルが張り巡らされており、インターネット通信の98%を担っている。海底ケーブルの99%は民間企業が所有し、保守している。海底ケーブルは通常、漁船や浚渫(しゅんせつ)船(訳注:水深を深くするために海底の土砂を取り去る作業を行う船)によって、年間約150~200回、意図せず損傷を受けている。
バルト海と台湾近海で相次ぐ海底ケーブルの破損
バルト海と台湾北部海域で最近相次いで発生した海底ケーブル損傷の容疑者とされる船舶の船長らも同様に、意図せぬ事故だったと主張している。欧米の政府関係者の中には、この主張を認める向きもある。だが、6件の損傷が時間的、地理的に近接していることに加え、船舶のロシアや中国との関連が疑われている。中国の技術者がケーブル切断装置の開発で特許を申請したとも報じられた。昨年11月17~18日、ロシア産の肥料を積んだ中国船籍の船が、スウェーデンとリトアニア、フィンランドとドイツを結ぶ2本の海底ケーブルを破損した疑いが持たれている。フィンランドは12月26日、この前日にフィンランドとエストニア間の海底を通る電力ケーブルを切断した疑いで、南太平洋のクック諸島に船籍を置くロシアの船舶を拘束した。ノルウェーは今年1月下旬、スウェーデンとラトビア間の海底ケーブルを損傷した疑いで、ロシアに向かう途中の貨物船を一時拘留した。同貨物船はノルウェー船籍だったが、乗組員は全員ロシア人だった。今月8日には、ロシア国営タス通信が、同国最大の通信事業者ロステレコム所有のバルト海底ケーブルが破損したと伝えた。隣接するフィンランドは修復作業を注視している。