政治

2025.02.19 11:00

欧州と台湾の海底ケーブル破損、ロシアと中国が関与か 国際法には抜け穴が

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また、「国連海洋法条約(UNCLOS)」にも不備があり、海底ケーブルを損傷した船舶に責任を負わせることも難しい。同条約は、すべての国が、海底ケーブルを損傷した自国民や自国船籍の船舶を処罰の対象とする法律や規則を定める「べき」だとしているに過ぎない。多くの国にはそのような法律がないのが現実だ。UNCLOSでは、各国は沿岸から12海里以内とされる自国の領海で発生した海底ケーブル事故に対する司法権を持つと定められている。だが、それを超える海域で発生した事故の司法権については明記されていない。

各国は、沿岸から200海里以内の排他的経済水域(EEZ)にある天然資源に対する排他的権利を持ち、その権利を保護するための措置を講じることができるが、海底ケーブルに対してはこれがどのように適用されるのかは明示されていないのだ。沿岸国と海底ケーブルを所有する民間企業のどちらがEEZ内のケーブルを管理しているのかは法的に不明であり、保険会社はこれを明確にしたいはずだ。沿岸から200海里を超える公海では、旗国と加害者の国籍のある国のみが、海底ケーブル損傷に対して明確な司法権を持つ。他方で、被害国の司法権については明示されていない。

こうした国際法の不備が、海底ケーブル損傷に対するNATO諸国の初期対応を遅らせたのだ。フィンランドは昨年11月、1884年に締結された海底電信線の保護に関する条約を読み直し、容疑船の捜査を許可した。一方、隣国のエストニアは、国際水域を航行する船舶は捜査対象から除外されると主張した。現状では、捜査のあり方についての統一された基準もないため、協力を一層複雑にしている。

法治国家を挑発するロシアと中国

NATOはついに先月下旬、バルト海周辺の巡回と監視を強化する「バルティックセントリー」を開始した。NATOはこうした動きが容易に武力衝突に発展することを理解している。ロシアの特殊作戦部隊は2014年に同国がウクライナ南部のクリミア半島を併合する前に、同半島とウクライナ本土を結ぶ海底ケーブルを破損した。1カ所でも損傷があると、被害は拡大しやすい。

ロシアと中国は、武力衝突の基準には満たない挑発行為に対し、法治国家がどのように反応するかを試している。NATO加盟国と台湾は、ロシアや中国によるこのようなローフェアに対抗するため、準備を怠ってはならない。海底ケーブルをはじめとする重大な脆弱性のある国際法を巡っては、法治国家間で積極的に共通の理解を見出していく必要がある。ロシアや中国の挑発行為に対抗するため、法的にも軍事的にも準備を整えておかなければならない。文字通りの意味でも、比喩的な意味でも、主権を維持できるかどうかがここに懸かっている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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