国際法はなぜ海底ケーブルを保護できないのか?
ロシアと中国は、地政学的な目的を達成するために国際法の抜け穴を利用している。両国は、国際法には海底ケーブルの損傷に対する説明責任がほとんど規定されておらず、法治国家がこれに対処することが難しいという脆弱(ぜいじゃく)性に目をつけているのだ。1884年に締結された「海底電信線の保護に関する条約」に署名したのは米国とロシアを含む36カ国のみで、中国は批准していない。この条約は、平時に海底ケーブルを損傷することを違法と定めている。だが、海底ケーブル事故を捜査し起訴する権限を持つのは、加害者とされる船舶の旗国または船籍国のみとされている。軍艦の艦長は、海底ケーブルを損傷した疑いのある船舶の船長に対し、船籍を証明する書類を要求することができるが、それ以外の捜査方法や権利などについては条約に明記されていない。多くの旗国や加害者とされる国には、このような捜査を適切に実施する動機も能力もない。
国際法では、すべての船舶は国家によって登録、または旗国とされることが義務付けられている。船主は有利な法律を利用するため、あるいは身元を隠すために、他国から国旗を購入することが多い。リベリア、マーシャル諸島、クック諸島、パナマ、マルタ、バハマなどは「便宜置籍国(訳注:外国が所有する船舶の船籍登録を認める国)」として知られ、違法船舶も含め、船舶が簡単に国旗を購入することができる。中国は昨年12月、自国の船に対する捜査への協力をスウェーデンから求められたが拒否し、スウェーデン政府関係者の捜査への参加も認めなかった。