その他

2024.03.13 12:00

世界のネット接続の97%を担う「海底ケーブル」は戦争で狙われやすい

Germany Mecklenburg-Western Pomerania Baltic Sea - undersea cable to Hiddensee island(Photo by Jens Köhler/ullstein bild via Getty Images)

Germany Mecklenburg-Western Pomerania Baltic Sea - undersea cable to Hiddensee island(Photo by Jens Köhler/ullstein bild via Getty Images)

香港の通信大手HGCグローバル・コミュニケーションズは3月4日、アラビア半島とアフリカ大陸の間の紅海で3本の光ファイバーケーブルが損傷し、イエメンでの紛争が続いているため、修復には数週間から数カ月がかかる可能性があると報告した。この3本のケーブルは同地域のインターネットトラフィックの約25%を支えていた。

ケーブルの損傷は、2月中旬にイエメンを拠点とする親イラン武装組織フーシ派のミサイル攻撃を受けて沈没した貨物船の錨(いかり)が接触したことで起きた可能性が高いとされている。

この事件は、ネットのトラフィックの約97%を担う海底ケーブルが、脆弱であることを浮き彫りにした。ワシントンD.C.に本部を置くシンクタンクの戦略国際問題研究センターの軍事フェローのマイケル・ダラーは、フォーブスに対し「海底ケーブルの損傷は多くの場合、事故なのか意図的なものなのかを判断するのが難しい」と語り、外国の敵対勢力がケーブルを攻撃対象にする可能性を指摘した。

一方、調査会社TeleGeographyのリサーチ担当のティム・ストンジは、このような小規模なタイプの攻撃は、必ずしも大きな混乱をもたらすとは限らないと述べている。海底ケーブルに影響を与える事故は年間100件ほど発生しており「業界は事故に慣れている」と彼は指摘した。これらの事故の約3分の2は、ケーブルが漁網に引っかかったり、船の錨に引っ張られたりして生じたもので、通常は数日で復旧が可能という。

ほぼすべての海底ケーブルは民間企業が所有しており、古いケーブルの多くは、通信プロバイダーのコンソーシアムや、プロバイダーに容量を販売する目的でケーブルを建設した企業によって敷設されたものだ。また、近年はシリコンバレーの大手もこの分野に参入しており、TeleGeographyは、メタやグーグル、マイクロソフト、アマゾンの4社だけで利用可能な海底帯域幅の半分近くを所有またはリースしていると推定している。

ストンジはまた、業界は冗長性を高めることでほとんどの事故に備えていると付け加えた。例えば、紅海で3本の海底ケーブルが切断された後も、残りの11本のケーブルがトラフィックを支えている。TeleGeographyによると、現在稼働している海底ケーブルは、計画中のものを含めると約574本存在する。このため、2022年の海底火山の噴火で海底ケーブルが破壊され、ネットに接続不可能になった島国のトンガのような事例が他の国で起こることは考えにくいという。

「監視の強化」が必要

そんな中、戦略国際問題研究センターのダラーは、直近で取り組むべき大きな課題は、ケーブルに損害を与える可能性のある船舶の特定を容易にすることだと述べている。

このような取り組みは、2023年2月に台湾沖の離島の馬祖島へのネット接続を遮断した2本の海底ケーブルの損傷事故の原因究明につながる可能性がある。台湾の国家通信委員会は、復旧に1カ月以上を要したこの海底ケーブルの破損を中国船のせいだと報じたが、証拠を示すことはできなかった。

政府がインフラの監視を強化し、レーダーや衛星画像、船舶などのセンサーからの情報を活用し、海底ケーブルの破損の原因を特定できるようになることが望ましいとダラーは述べている。「海底インフラが敵対勢力の攻撃対象になりやすいのは、監視が難しいからだ。その難点を取り除けば、海底ケーブルは魅力的な標的ではなくなる」と彼は続けた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事