400名以上の登壇者を迎え、80超の基調講演やパネルディスカッション、9カ国16社のスタートアップによるピッチコンテストなどが行われ、業種や職種の枠を越えた国内外のプロフェッショナル5000人以上が集結した。
Forbes JAPAN Webでは、5回にわたりその様子をレポート。初回は初日に行われたSDGインパクトジャパン 代表取締役 Co-CEOの小木曽麻里をモデレーターに、三菱UFJ銀行 事業共創投資部 副部長の西地賢祐と、スタンフォード大学 主任研究員で医師の池野文昭が、「未来共創」について語り合ったセッションにスポットを当てる。
同セッションではまずTechGALAらしく、「技術を通して取り組んでいくべき日本の重要な社会課題」を8つ提起。登壇者はそのなかから自らが取り組む分野や課題感などについて語り始めた。
除雪の工期を4割削減。海外も注目の3Dマップ
西地:少子高齢化が、さまざまな問題の中心になると思います。社会保障は当然、医療、介護、経済の成長にも大きな影響を与えます。2050年には日本の人口が現在の1億2300万人から2000万人減少し、2060年には3000万人減ってしまうと報告されています。そのほとんどが、生産年齢人口と言われる15歳から65歳です。3000万人といえば、東京と愛知と大阪の人口を足したくらいの数。将来いかに日本の市場が小さくなるかわかると思います。
一方、世界の人口は現在81億人ですが、2050年代には100億人になると言われています。日本では市場が小さくなる反面、海外では市場がとてつもなく広がります。
日本国内では少子高齢化による労働力不足は大きな課題です。我々三菱UFJ銀行は、三菱電機を中心に日本のOEM10社で立ち上げた自動運転向け3Dマップを作る、ダイナミックマッププラットフォーム社とJVを組みました。
注目したのは、雪国における除雪のDXです。雪国での除雪は生活に密着していて、物流などにも大きく関わってくる問題です。立山のアルペンルートなどをイメージしていただけるとわかると思うのですが、除雪車は積雪でまったく道路が見えないなか、10mもの雪を掘り下げていきます。吹雪になると周囲が見えなくなりますし、山道の場合、道路から外れると落下の危険性もあります。
これまで15年、20年のベテラン選手が勘に頼ってやってきましたが、高齢化も進み、後継者もいない。そこで自動運転用ではありますが、3Dマップを除雪用のショベルカーに搭載し、雪の下にある道路や看板、マンホールなどの位置を見える化するとどうなるか、岩手県にあるアスピーテライン(冬季全面通行止め)で実証しました。
すると60日かかっていた除雪の工期を4割ほど減らすことができ、作業員の方が週末もしっかり休めたと自治体からも喜ばれました。15年かかると言われていた除雪技術の習得も5年ほどで可能になり、若手でもやりやすくなります。他の自治体からも多くの引き合いがあり、カナダなど海外からも実証の誘いがあります。日本の高齢化対策を逆手にとって、DXや技術革新で海外に出ていくひとつの例です。