今こそオールドエコノミーの力を利用してほしい
小木曽:最後の質問ですが、日本の今後のあるべき姿、勝ち筋はどう考えていますか?
西地:未来を先取りするという発想をもち、課題を技術で解決するとなれば、AIはもはや所要です。日本の研究開発費は世界で3番目ぐらいですが、圧倒的に社会実装が遅れています。そこを我々がお手伝いしたいと思っています。スタートアップの方たちにはもっと、私たちのようなオールドエコノミーの力を信用してもらいたいですね。
オールドエコノミーでは、新しい事業やCVCを作ったりしていますが、なかなか本体は変われない状況です。ですからスタートアップと出島で交流するだけでなく、本丸の機能やリソースを動かすような共創ができればと考えています。
すでにBMWがやっているスタートアップとの共創の仕組みで「ベンチャークライアントモデル」というものがあり、大企業がスタートアップのサービスを資本投下や特許を取るなどといったことをせずにスモールアマウントで買い、どんどんアジャイルで進めていくという仕組みです。これを日本流にアレンジして行うべきで、我々もオールドエコノミー代表として、中堅中小企業もアカデミアもつないでいきたい。
東京科学大学の辻本将晴教授は、「共創と共進化」の重要性を唱えています。多様なエコシステムのプレイヤーが互いに影響を与え合って、スタートアップエコシステム全体を進化させていく、こういう持続的なシステムを作っていくことからまずやっていくべきだと思います。
池野:日本の強いところは抜群の安定感であり、そこでやらなければいけないことがテクノロジーを用いた進化だと思います。そのためには比較的頭が柔軟で、フットワークが軽い若い世代の人たちに対して、我々の世代が出る杭を打ってはいけないんです。「若い人には口を出さずに金を出そう!」という文化が大事で、そうでなければイノベーションは起こりません。
もはや相手は日本人だけではありません。「オール地球」なんです。マインドセットを変えていかなければならない。そのためには、会うことが一番です。たとえばシリコンバレーの外国人を名古屋に呼ぶとか、日本の若い人をシリコンバレーで交流させるなど、積極的にやった方がいい。我々の世代がそれをやるべきで、日本が最もやらなければならないことだと確信しています。

小木曽:力強い言葉をありがとうございます。ここには若い方もたくさんいらっしゃるので、若い世代の方にも一言お願いします。
西地:イノベーションの種が身近にあることは、今日よくわかったと思います。名古屋にも中京地区にもたくさんあります。ここからイノベーションをぜひ起こしてください。
池野:自分ひとりでは世界は変えられないと思っているかもしれませんが、自分自身は変えられます。ここにいる全員が、将来の課題に向かって自分自身を変えて一歩踏み出すことが、大きなうねりになっていきます。いわゆるバタフライエフェクトです。これが日本人には重要です。まず行動しましょう。