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2025.02.19 14:15

少子高齢化こそ日本の大きなビジネスチャンスだ【TechGALAレポート#1】

左からSDGインパクトジャパン 代表取締役 Co-CEOの小木曽麻里、三菱UFJ銀行 事業共創投資部 副部長の西地賢祐、スタンフォード大学 主任研究員で医師の池野文昭

直前まで私は佐久間町にいて、鉄道会社がバス事業から撤退して地域でバスという移動手段がなくなる現実に直面していました。すると、車を運転しなければ病院に行けないわけです。結果、高齢者が自動車を運転したことによる事故も発生していました。

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スタンフォード大学の20代前半の学生たちは、当時そんな未来の課題を考えて、対応策を研究していたのです。その後、彼らは卒業してGoogleやテスラに就職しました。今やサンフランシスコ内のタクシーは約半分が自動運転です。

自動運転タクシーWaymoが走行する様子を収めた動画が会場で放映された。これがサンフランシスコを日常だという

自動運転タクシーWaymoが走行する様子を収めた動画が会場で放映された。これがサンフランシスコの日常だという

AI後進国、日本ならではの戦い方

小木曽:おふたりが取り組まれている分野で、AIがどのような産業の変化と未来をもたらしているか教えていただけますか?

西地:弊行で注目しているのが宇宙分野です。ちょうど日曜日(2月2日)にH3ロケットで「みちびき(6号)」の打ち上げが行われましたが、今宇宙産業では色々な衛星を作ったりと、上流中流とあるなかで、衛星データがその下流として産業を変える可能性があると見ています。

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何ができるようになるかというと、先ほどの3Dマップと似ていて、見えないものや見えづらいものを見えるようにすることです。当然、弊行だけではできないので、いろいろな企業と一緒に共創の座組を作りました。

意外性のある事例としては、JAXAからの委託です。2021年に「衛星データサービス企画」を立ち上げ、JAXAと一緒にカーボンクレジットのための森林モニタリングをやっています。衛星画像をAIで解析して、CO2吸収量を樹木の体積で推計するという取り組みです。

ここまでは想像がつくと思うのですが、次のステップでは光合成で生じるメタンガスやCO2を画像でとらえることができる「ハイパースペクトルカメラ」を衛星に積んで、測定を始めました。すると、AIを使った推計と科学的に検証して実測できるものとでは圧倒的に信頼度や透明度が違う。問題となっているグリーンウォッシュのリスクを減らし、カーボンクレジット市場にお金が流れやすくなります。

そこからサステナブルファイナンスやインパクトファイナンスなどへ色々な応用もでき、広がっていくと思っています。

衛星データを用いたカーボンクレジットのための森林モニタリング。さまざまな企業・組織との共創によって実現した

衛星データを用いたカーボンクレジットのための森林モニタリング。さまざまな企業・組織との共創によって実現した

池野:AIは画像を識別することに長けていると思います。医療分野でいうと、放射線科の医師はどこに腫瘍があるか、CTスキャンの画像を1日に何百枚も、夜遅くまで見るわけです。ところがAIに読ませると0.2秒ぐらいです。

昨年の秋、アメリカの医学雑誌に載りましたが、世界の一流大学の有能な医師がAIと、模擬患者に対して症状や血液検査の結果から診断名を当てるということを競争したところ、AIが圧勝しました。もちろん医師にしかできないことはたくさんありますが、AIを使うことで人命が救われるということです。

もう一歩踏み込んだところでは、ロボット手術があります。ロボットでは人間ができないような細かな手の動きができますし、人間の目では見えないものが3Dで見えるようになるので、合併症が少なくなります。さらに今、アメリカや日本で開発が進んでいるのが、ロボットにAI、すなわち頭脳を搭載することで、「これ以上押すと危険」「ここに重要な神経が走っている」と事前に教えてくれるシステム。

AIは単独では物理的な社会に貢献することは難しいですが、AIがロボットという体を借りることでまさに動き始める。このAI×ハードウェアの組み合わせは、医療だけでなくさまざまな領域で出てくると思います。

ハードウェアに関していえば、中部地区はサプライヤーが世界最高クラスです。今、世界で最も売れている、アメリカで開発された医療用ロボット「ダビンチ」の初期モデルの部品はほとんどがメイドイン愛知です。ハードウェアの技術があれば、AIが進んでいる国の人たちと組めばいい、そう思っています。

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文=真下智子 編集=大柏真佑実

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