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映画

2025.02.16 10:15

映画「ドライブ・イン・マンハッタン」タクシー車内でのスリリングな会話劇

女性客を演じるダコタ・ションソン(右)とドライバー役のショーン・ペン(左)、2人の会話で物語は進む © 2023 BEVERLY CREST PRODUCTIONS LLC. All rights reserved.

女性客を演じるダコタ・ションソン(右)とドライバー役のショーン・ペン(左)、2人の会話で物語は進む © 2023 BEVERLY CREST PRODUCTIONS LLC. All rights reserved.

「ワンシチュエーション劇」というジャンルがある。限られたひとつの場所で物語が進行し、完結していく作品だ。

最近の映画で言えば、アンソニー・ホプキンスがアカデミー賞主演男優賞に輝いた「ファーザー」(2020年、フローリアン・ゼレール監督)や、同じく同賞を受賞した「ザ・ホエール」 (2022年、ダーレン・アロノフスキー監督)などがそれに当たる。

どちらの作品も舞台劇の映画化で、ほぼ同一の空間のなかで濃密な人間ドラマが展開されていく。両作品とも、もとになる戯曲の評価も高かったためか、作品としての完成度は高い(特に前者は劇作家が自ら監督しているため、かなり趣向を凝らした映像も魅力だ)。

「ドライブ・イン・マンハッタン」も、このワンシチュエーション劇に相当する。ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港からマンハッタン島のミッドタウンまで、1台のタクシーに同乗することになったドライバーと乗客の会話で90分超の物語が進行していく。

劇中ではイエローキャブの車内で、ジョン・F・ケネディ空港からマンハッタンのミッドタウンまでドライバーと女性の会話が続く

劇中ではイエローキャブの車内で、ジョン・F・ケネディ空港からマンハッタンのミッドタウンまでドライバーと女性客の会話が続く© 2023 BEVERLY CREST PRODUCTIONS LLC. All rights reserved.

本作の映像のほとんどは、ニューヨークのタクシー「イエローキャブ」の車内。時折、走る車の映像や車窓越しに見える街の風景も映し出されるが、大半を占めるのがドライバーと乗客の会話シーンだ。

作品の舞台は限られているが、卓抜したセリフとそれを演じる俳優たちの緻密な演技、それに念入りにつくり込まれた映像で、この「ドライブ・イン・マンハッタン」は、最後まで観ていてもまったく厭きることがない。

ワンシチュエーション劇は、低予算で製作できることも利点となるのだが、そのようなチープさもいっさい感じさせることなく、クオリティの高い素晴らしい作品となっている。

車内での小気味よい会話が楽しい

夜のニューヨーク、ジョン・F・ケネディ空港。到着したばかりの1人の若い女性(ダコタ・ジョンソン)が、キャリーケースを引きずりながらタクシー乗り場にやって来る。

空港の配車係に行き先を告げて、タクシーに乗り込む女性。配車係から渡されたメモを確かめるドライバー(ショーン・ペン)。行き先はマンハッタンの「44丁目9番街と10番街の間」、ドライバーにとっても馴染みのある場所だった。

女性は座席に乗り込むと、目の前のニューヨークの観光案内を流すモニターを消す。口紅を引き直し、マフラーをはずしながら、深いため息をつく。バッグからのぞく携帯に視線を落とすが、手に取る素振りはなく、何か考えごとをしている様子だ。
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文=稲垣伸寿

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