映画

2023.04.07 19:00

主人公は体重272キロ!アカデミー賞主演男優賞受賞の「ザ・ホエール」

「ザ・ホエール」は4月7日(金)からTOHO シネマズ シャンテほか全国公開 (C)2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

「ザ・ホエール」は4月7日(金)からTOHO シネマズ シャンテほか全国公開 (C)2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

映画「ザ・ホエール」の主人公は、体重600ポンド(272kg)で、すでに自力で動きまわることは困難な状態となっている。とはいえ、大学生相手のオンラインの文章講座で生計を立てており、それなりの蓄えもあるらしい。

作品の冒頭、オンライン講座を受ける学生たちの姿がマルチで映し出されるのだが、主人公の姿は画面には登場しない。この少し謎めいた導入部は最後の決定的な場面へと呼応していく。

主人公の巨体は、現実逃避から過食を繰り返してきた結果なのだが、何せ歩行器なしでは移動もままならないため、物語はほとんど彼の部屋を舞台に展開していく。勢い、主人公の演技が作品の成否にとっては重要なものとなっている。

この超巨漢の主人公を演じたブレンダン・フレイザーは、今年の第95回アカデミー賞で主演男優賞に輝いた。撮影のたびに4時間を費やす特殊メイクと45キロもあるボディスーツを身につけていた彼は、この動きのないシチュエーションのなかで卓抜した演技を展開しており、それが今回の演技賞受賞にも繋がった。

ブレンダン・フレイザーと言えば、主演したアドベンチャー映画「ハムナプトラ」シリーズ(1999年〜2008年)の颯爽とした姿が印象に残っているが、「ザ・ホエール」ではもちろんその面影はない。まさにイメージを一新する役柄に挑戦していたのだ。

本作は、アカデミー賞でメイクアップ・ヘアスタイリング賞も受賞している。

舞台が原案の濃密な密室劇

「ザ・ホエール」は2012年に初演されたサミュエル・D・ハンターの舞台劇が原案となっている。映画での脚本もハンター自身が担当しており、「鬼才」とも呼ばれる監督のダーレン・アロノフスキーが、インテリジェンス溢れるアプローチでこのワンシチュエーション劇を見事に映像化している。

「恋人」を喪ったショックから精神と身体を制御できなくなったチャーリー(ブレンダン・フレイザー)は、過食を繰り返し、272キロの巨体を持て余しながら独りで引きこもり生活を送っていた。

ある日、激痛に襲われたチャーリーのもとに、宣教師であるトーマス(タイ・シンプキンス)が勧誘に訪れる。チャーリーは彼の助けを得て、看護師であるリズ(ホン・チャウ)を呼ぶ。リズはチャーリーの面倒を見る唯一の人物で、かねてから彼に入院を勧めていた。

宣教師のトーマスを演じるタイ・シンプキンス (C)2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

宣教師のトーマスを演じるタイ・シンプキンス (C)2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

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文=稲垣伸寿

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