監督は「ELLE」や「ヴォーグ」などで活躍していたファッションカメラマンのジュスト・ジャカン。彼にとっては初めての監督作品だったが、そのキャリアを生かした美しい映像で、日本でも女性観客を中心に大ヒットを記録した。
当時は「ソフトポルノ」とも称されていたが、日本での公開にあたっては、かなり多くの画像処理や削除が施され、誰もが観賞可能な一般映画として公開された。このことも、多くの観客が劇場に足を運んだ理由だと言われている。

主人公のエマニュエルは、高級ホテルの査定を仕事にするキャリア女性 © 2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS - GOODFELLAS - PATHÉ FILMS
本国フランスでも大ヒットを記録したためか、その後、シルビア・クリステル主演の「エマニエル」シリーズは、「続エマニエル夫人」(1975年)、セルジュ・ゲンズブールの主題曲が印象に残る「さよならエマニエル夫人」(1977年)と、立て続けに製作された。
いずれも物語の舞台はフランス国内ではない。「エマニエル夫人」がタイのバンコク、「続エマニエル夫人」が極東の香港、「さよならエマニエル夫人」がインド洋に浮かぶセイシェルと、このシリーズは「異国情緒」とは切っても切れない関係にあった。
「エマニエル夫人」から50年、同じくエマニュエル・アルサンの小説「エマニュエル夫人」を原作として製作された映画「エマニュエル」は、半世紀前の大ヒット作品にあやかったリメイクなどではない。
誤解を恐れずに言えば、この新「エマニュエル」は、原作小説を基にしてまったく新しいエマニュエル像を創り出した、きわめて思索的な観賞すら要求されるクオリティ高い作品なのだ。
