企画展、アートフェア、オークションなど多彩な話題が飛び交うアートの世界。この連載では、毎月「数字」を切り口にビジネスにも通じる話をお届けしていく。今回は南仏から。ラグジュアリーブランドとアートの蜜月について考えてみたい。
1904年、裕福な出自のモータリストチャールズ・ロールズと、幼いころから働いて電気工学を極めたヘンリー・ ロイスが出会い「ロールス・ロイス」 が誕生。120年にわたり完璧を追求するブランドは、世界最高峰の代名詞に。その試乗会の会場に「シャトー・ ラ・コスト」が選ばれた理由とは?

ルイーズ・ブルジョワのブロンズ像「Crouching Spider, 2003」
藤忠雄が手がけた建築の横に、ルイーズ・ブルジョワの蜘蛛「ママン」が佇む。南仏プロヴァンスにあるワイナリー「シャトー・ラ・コスト」の一角だ。
500エーカーの広大な敷地に、ブラジルの巨匠オスカー・ニーマイヤーの建築、アイ・ウェイ・ウェイが手がけた小道など著名作家の作品が点在する。5つあるギャラリーのひとつでは、ダミアン・ハーストの展覧会が行われていた。
ダミアン・ハーストの新作個展
2024年11月、そこに40台を超えるロールス・ロイスが集まった。10月に発表された「ゴースト・シリーズ2」の国際試乗会のためだ。約2週間かけ、1泊20万円は下らないヴィラに世界中から100を超えるメディアが招かれた。
2024年は、ロールス・ロイスの創設120周年。同社は常に特別な会場を用意するが、メモリアルな年により縁のある場所を選んだという。
(c)Rolls-Royce Motor Cars
まず南仏は、創業者のひとりヘンリー・ロイス卿が晩年に家をもち、冬を過ごしていた場所。「夏は南イングランド、冬は南仏と行き来していた彼に習った」とグローバル・コミュニケーションズ・ディレクターのエマ・ベグリー。その家付近の植物園で見かけた竹林が、新たなシート素材「デュアリティ・ツイル」のインスピレーションになったというつながりもある。
また南仏は、100年以上前に最初のテスト走行を実施した場所でもある。顧客も好むこの地域は、信号が少なく、ときに狭いカーブ道が続く。そこで優れたパフォーマンスをするかは重要事項なのだ。