ライフスタイル

2025.01.02 16:00

はかなさを大切な時間へ。親友の言葉とワインの思い出:The Gift (シルヴァン・シマール ネスレネスプレッソ)

2012年のシャトー・モーヴ ザン・バルトン。

2012年のシャトー・モーヴ ザン・バルトン。

贈り、贈られたモノや体験は、人生を変えるほどの力を持つことがある。企業のトップ、リーダーたちが経験した、モノや体験に介在する特別な思い入れを紹介する。自身の生き方、サクセスストーリーにも影響を及ぼしたであろう「GIFT」の逸話には人間味あふれる姿がある。希薄化も言われる現代の人間関係とは異なる、特別な関係だ。


THE GIFT #19

シルヴァン・シマール

ネスレネスプレッソ代表取締役社長
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2012年のシャトー・モーヴザン・バルトン。
このボルドーを飲むたびに親友のことを思い出すという。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数年前、私は第2子が誕生したばかりのスイスの親友を訪ねた。彼は、私がネスレネスプレッソのスイス本社にいたころの同僚で、食事や旅行を共にしながら、約8年、仕事を超えた深い関係を築いてきた大切な存在だ。その夜、彼はボルドーワインの特別なボトルを開けてくれ、素晴らしい出産祝いを過ごすことができた。

帰り際、彼は同じボトルを私にプレゼントしてくれたのだが、残念ながらそれは彼からの最後の贈り物になってしまう。彼はそのわずか数カ月後に病に倒れ、1年半の闘病生活の末にこの世を去ってしまったのだ。
 
彼からもらったこのワインは、私に深い教訓を与えてくれた。ワインというギフトは、ワインセラーにしまっておくものではない。贈り主とのつながりを思い、大切な人たちと味わい、貴重な時間を共に過ごしてこそ価値のあるものであると。人生ははかない。このときから、私は特別な日のために取っておいたワインを楽しむ習慣を身につけ、友人や家族と数えきれないほど喜びの瞬間をつくり出してきた。
 
ところで、あの日友人からもらったワインはどうしたかって? もちろん開けたよ。そして、大切な時間を楽しませてもらった。


シルヴァン・シマール◎1979生まれ。チョコレート業界を経て、2009年にネスレネスプレッソに入社。ネスプレッソ本社および各国でさまざまな役職を歴任し、23年9月、妻と娘とともに日本に拠点を移し、ネスレネスプレッソの代表取締役社長に就任。

文=伊藤美玲 イラスト=東海林巨樹

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事