ル・ピュイ=サント=レパラード村の約500エーカー(2平方キロメートル)の広大な土地に建つホテル、現代アートと建築、ブドウ栽培とガストロノミーが融合したシャトー・ラ・コストの敷地内には、安藤忠雄の設計によるアートセンターも併設されている。
そして、点在する建物を取り囲むブドウ園や森の中には、著名なアーティストたちの手による40以上の彫刻が設置されている。オリーブの木やオークの古木、糸杉、カサマツが立ち並ぶプロバンスの美しい風景の中を、アート作品を探しながら丸一日、散策することもできる場所だ。
アーティストたちが描く夢と悪夢
伝説的な英建築家、リチャード・ロジャースが設計を手掛けたリチャード・ロジャース・ギャラリーで開かれた「Une Chambre à Soi」は、作家ヴァージニア・ウルフの同名の著作にインスピレーションを得た展覧会だ。その会場であるギャラリーは、その最も象徴的な建築物であるパリのポンピドゥー・センターからもわかるととおり、形態がいかに機能に付き従うものであるかについての探求をライフワークとしたロジャースの設計らしく、構造的な特徴が外観からも明らか。カンチバレー構造を採用しており、木々に囲まれた丘の上に浮かぶような姿をしている(残念ながらロジャースは、この建物の完成を待つことなく死去している)。
20人近いアーティストたちの「日没から日の出までの旅」、つまりそれぞれの夜を視覚化した作品が並ぶこの展示会を訪れる人たちを出迎えるのは、「おやすみなさい」という言葉。中に入ると、ドラマチックなダークカラーのカーテンとガラス張りの壁の向こう側に、ブドウ畑が広がっている。
キュレーターのマルゴー・プレッシーは、子宮に見立てたスペースを巧みに作り出し、ベッドルームの雰囲気が漂うなかに、アーティストたちが自身の睡眠、あるいは不眠の体験を表現した絵画、彫刻、インスタレーションを展示。また、そのタイトルどおり、キュレーターの文学への愛が反映されたこの展覧会では、フランスの偉大な作家たちの言葉も紹介された。