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食&酒

2025.02.23 14:15

パリから虎ノ門へ フレンチ北村啓太が目指す「一つ星」の先

モダンフレンチレストラン「アポテオーズ」の北村啓太シェフ

パリに拠点を移し、数店で働いたのち、「シェ レザンジュ」というビストロで就労ビザを取得。「人気店だけに、仕事量が半端ない」という環境で、誰にも負けない手の速さを身につけ、3年が経った2011年、系列店である「オウ・ボン・アクーユ」のシェフに抜擢された。

フランス料理の店は、洗練された高級料理を提供する“レストラン”(ガストロノミー)と、伝統料理や地方料理を出す“ビストロ”に大きく分類できる。ビストロの料理は、成澤氏の下で習ったクラシックな料理の源流でもある。「ビストロは、季節ごとのメニュー数とバリエーションが多い。瞬時に頭の中でメニューを組み立てる能力は、その時代に培われました」。
 
決して手を抜くことはなく、真摯に料理に向き合い続けること5年。その頃から、パリで日本人シェフの活躍がめざましいものが出てきた。「パッサージュ53」の佐藤伸一氏が二つ星を、「レストランKEI」の小林圭氏と「SOLA」の吉武広樹氏が同時に一つ星を獲得。北村氏の中に、「これは負けていられない、そこを目指したい」という気持ちが強く湧き上がってきた。

アポテーズの入る虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 49F

アポテオーズの入る虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 49F

「一つ星」の先へ

そんなとき、日本酒を販売し、居酒屋を持つ「ラ メゾン デュ サケ」のオーナーから声がかかった。経営が不調の居酒屋を立て直してもらえないかと誘われ、シェフに就任。これまでの経験をフルに生かし、居酒屋から「レストラン エール」というガストロへノミ―レストランへの転換をはかり、2年で一つ星を取得した。

「発表の3日前に電話があったときには、本当に嬉しくて、過去にやってきたこと、悔しかったことが走馬灯のようによみがえり、涙が出てきました」。ガストロの仕様ではない店で一つ星をとれたということは、北村氏の料理そのもの、腕一本が評価されたということだった。

しかし、翌年も翌々年も二つ星には届かず、5年間一つ星が続いた。

料理には自信があった。店のトータルコーディネイトが足りない。といっても、もともと立て直しで始めた店。椅子を買い直したり、好みのプレートを購入してもらったが、そんな付け焼刃では足りなかった。

そんなときにレストラン運営会社のプラン ドゥ シーから森ビルが「虎ノ門ヒルズ・TOKYO NODEの最上階に、日本のフラッグシップになるガストロノミーレストランをつくってほしい」という話が舞い込んできた。森ビルとしては、どうしたら東京を代表するレストランを作れるのか、あらゆる可能性を検討していた。その中で、星付きシェフを連れてくるだけでなく、共に発展、成長していけるパートナーとして北村氏に白羽の矢が立った。
次ページ > チームワーク抜群のスタッフと東京で

文=小松宏子

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