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食&酒

2025.02.23 14:15

パリから虎ノ門へ フレンチ北村啓太が目指す「一つ星」の先

モダンフレンチレストラン「アポテオーズ」の北村啓太シェフ

北村氏のスペシャリテに「主役が逆に」という料理がある。

見事に立ち上がったこうばしいフィユタージュ(パイ生地)の中に、サヴォイキャベツと紫キャベツがぎっしり詰められ、せこ蟹(ズワイ蟹の雌)のソースがたぷたぷとかかっている。北海道の佐々木ファームが扱う、冬の間、壁に氷を張った冷蔵倉庫で甘く熟成させたキャベツを使うからできる料理だ。



厨房には、最新機器がずらりと並ぶ。たとえば「バリオ」。煮るも焼くも蒸すも自在で、電気で加熱するために夜中も稼働できるので、これまで3日かかっていたフォンドヴォーが1日半でとれる。働き方が問題になっている現代の救世主ともいえそうだ。メインに据えている京都弥栄の七谷鴨などの「ミートセラー」も、熟成の度合いを調整できるので、結果としてフードロスを防ぐことにつながっている。

また、遠心分離機でみかんの果汁をとったあとのかすを、粉砕してパウダーにして、さらにシートにして使うというような手法も、「サーモミクス」という強力なミキサーによって実現されている。

機材をいかしながら、なるべくフードロスの出ない料理を考えることこそが北村氏の役目。「地球環境への負荷を少しでも減らすこと、また、そうしたサステナブルな考えを持っている生産者を応援していくこと。それが、東京の中心から世界へ向けて料理を発信するものの、義務だと思っています」。



アポテオーズのコックコートの胸にはミシュランに配布されたバッジを付けている。現在の施設と環境のあるレストランであれば、フランスでも間違いなく二つ星はとれるだろうと北村氏は断言する。

2023年11月にオープンして一年足らずで、ミシュラン東京2025では一つ星を獲得した。果たして2026年度版のミシュラン東京がどのようになるか。そして今後さらに上り詰めていくことができるのか、その道程を楽しみに追いかけていきたい。

文=小松宏子

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