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2025.02.10 10:30

続出するプライバシー問題と社長会見で改めて考える「これからの個人データの扱い方」

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ミクロの視点では、データプライバシーに対する企業や組織、個人のモラルの課題も解決すべきだろう。先に挙げた例のように、ビジネスにおける契約者や顧客の情報の不正入手や不正利用だけでなく、高齢者を狙った凶悪犯罪でも個人名簿の存在が話題になるなど、いずれにおいてもその大元にはどこかで不正に流出したであろう個人データの存在がある。個人データの不正な持ち出しや利用に対する犯罪意識の低さ、もっというと個人データの主体の人権に対する意識の低さは憂慮すべき課題といえる。

同時に、企業や組織における対策上の課題も依然として大きいだろう。パロアルトネットワークスが実施した調査では、企業や公共機関の20%が内部不正による個人情報の漏洩を2024年上半期に経験したと回答している。多いと見るか少ないと見るかは見解が分かれるかもしれないが、実際にはより広範に内部不正による個人データの漏洩が発生していると推測される。なぜなら、セキュリティやデジタルモラルに関する教育に多くの企業や組織が注力する一方で、実効性の得られる対策に課題があるからだ。特に、SaaSアプリケーションの利用状況を可視化できていないなど、従業員によるデータ利活用の可視化に課題があるケースが非常に多い。

ChatGPTが話題になってもう2年が経過するが、従業員による生成AIのビジネス利用においても同じ問題が起きている。従業員による生成AIアプリケーションの利用状況を可視化できていないという問題だ。例えば、生成AIアプリケーションに従業員が顧客データをはじめとした業務データをプロンプト入力していないかどうか把握できていないという問題は多くの企業でみられている。「利用状況が見えているかいないか」ではなく「ルールで禁止しているから使っていないはず」「事故は起きていないので漏れていないはず」といった希望的観測も漏れ聞こえてくる。

データプライバシーの問題における「ダブルスタンダード」

冒頭に挙げた有名人の不祥事に関連して、報道機関の社長会見が話題になったのは記憶に新しい。世の中で起きている犯罪や不祥事に関する報道においては、第三者のプライバシーが侵害されることもあれば、ビデオカメラがあろうが当事者は取材に答えるべきという大前提のようなものがある。今回の事案では、当事者のプライバシーを盾に情報開示が行われなかったと受け取られたり、ビデオカメラなしでの会見という異例の対応が問題になった。ダブルスタンダードが槍玉に挙げられたといってもいいだろう。
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編集=安井克至

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