最新モデル「DeepSeek-R1」のリリースと相前後して、米国は国内のAIインフラへの巨額投資を発表していた。ディープシークの技術は、この投資で構築しようとしている計算能力の必要性に疑問を投げかける格好になった。ディープシークの出現は、1957年に旧ソ連が世界初の人工衛星スプートニクを軌道に乗せ、宇宙開発競争の主導権を握って世界に衝撃を与えた出来事になぞらえ、「スプートニク・モーメント」とも呼ばれている。
スプートニクには明らかに軍事的な意味合いがあった。米国人は90分ごとに頭上を通過するソ連のハードウェアに神経をとがらせるようになった。LLMでの中国のリードは、純粋に経済的な優位性に見えるかもしれない。けれども、AIを搭載した新世代のドローン(無人機)は、その優位性を軍事的な優位性に変容させていく可能性がある。
すでに戦場で使われているAI搭載ドローン
中国は小型ドローンの世界最大の生産国である。広東省深圳に本社を置くDJI1社で、世界の消費者向けドローン市場でおよそ70%のシェアを占めている。DJIは自社製品が軍事利用されることに強い遺憾の意を示しているが、同社のドローンはロシア・ウクライナ戦争において双方の間で広く使われるツールになっている。低コストのFPV(一人称視点)ドローン、簡単に言えば武装させたレース用クワッドコプター(回転翼4つのドローン)は、この戦争で最も重要な兵器になっていると言ってもいいかもしれない。ウクライナ軍とロシア軍で用いられているFPVドローンはそれぞれ自国で組み立てられているものの、その部品の多く、もしくは大半が中国製だ。