宇宙

2025.02.03 10:30

3兆回の観測 ESAの宇宙望遠鏡ガイア、銀河系地図の作成ミッション終了

天の川銀河(銀河系)を背景に描いたESAの宇宙望遠鏡ガイアの想像図(ESA–D. Ducros, 2013)



重元素

ハントによると、一般に、銀河の中心部に近いところで誕生する星は、銀河の外側で誕生する星に比べて、より重い元素の量が多くなる。従って、過去に遡って太陽がどこから来たかを明らかにするために、太陽の化学組成を利用することができるという。

ガイアのデータ処理分析コンソーシアムの会長で、オランダ・ライデン大学の天体物理学者アンソニー・ブラウンは、取材に応じた電子メールで、太陽の軌道と軌道半径の考えられる変化を再現するのは、不可能ではないにしても非常に難しいと指摘している。すなわち、恒星が一生を通じて銀河円盤内を移動し続けることは誰もが認めるところだが、これが太陽に当てはまるのを証明することは非常に難しいのだと、ブラウンは説明した。

では、銀河系はどのようにして形成され始めたのだろうか。

ブラウンによると、銀河系の最初の断片は、宇宙を生み出したビッグバンから間もない時期に集まった。これが形成の第1段階で、約100億年前に別の銀河との合体が起きるまで続いた。ここから始まった銀河系形成の第2段階では、今日の薄い円盤と厚い円盤が形成された。恒星の軌道の平均的性質が恒星の金属量の増加に応じて変化することから、銀河系円盤の「回転」の起源をたどることができるという。

銀河系は今なお、古代の衝突による擾乱を受け続けている。

ESAによると、銀河系の円盤は歪んでいて非対称であることは1950年代から知られているが、その理由についてはわかっていなかった。この歪みの原因は、別のより小型の銀河との継続的な衝突であることが、ガイアによって明らかになった。この銀河は、いて座矮小銀河で過去に3回、銀河系円盤を突き抜けた可能性が高い。いて座矮小銀河は、40億~50億年にわたって銀河系を周回しており、継続的な銀河衝突の間にゆっくりと引き裂かれているという。

サールマンによると、いて座矮小銀河と衝突するたびに銀河系での星形成が加速されており、この衝突期間の1つは太陽が形成された時期と一致していることが、ガイアによって判明した。また、星間ガス雲の巨大な波状構造「ラドクリフ波」が太陽の近くに位置していることが、ガイアによって明らかになったという。
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翻訳=河原稔

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