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宇宙

2025.01.29 11:00

銀河系の32倍の「巨大電波銀河」、南アの電波望遠鏡で発見

南アフリカ電波天文台(SARAO)が運用するミーアキャット電波干渉計が捉えた、新発見の巨大電波銀河「インカタゾ」。高温プラズマジェットの電波強度分布が赤~黄色で、すばる望遠鏡のHSCで撮影した可視光画像に重ねて表示されている(K.K.L Charlton (UCT), MeerKAT, HSC, CARTA, IDIA)

南アフリカ電波天文台(SARAO)が運用するミーアキャット電波干渉計が捉えた、新発見の巨大電波銀河「インカタゾ」。高温プラズマジェットの電波強度分布が赤~黄色で、すばる望遠鏡のHSCで撮影した可視光画像に重ねて表示されている(K.K.L Charlton (UCT), MeerKAT, HSC, CARTA, IDIA)

端から端までの長さが330万光年に及ぶ巨大な銀河を、天文学者チームが南アフリカにある電波望遠鏡群(干渉計)を用いて発見した。

これまでに発見された中で最大規模の1つであるこの巨大銀河は、約14億4000万光年の距離にあり、天の川銀河(銀河系)の32倍の大きさがあると考えられている。

巨大電波銀河「インカタゾ」

この巨大な天体は「巨大電波銀河(GRG)」に分類され、銀河間空間に数百万光年にわたって噴出した高温プラズマのジェットという特徴的な構造を持っている。このジェット構造は、銀河の中心にある超大質量ブラックホールがエネルギー源となっていると、科学者は考えている。

英国王立天文学会の学会誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載された論文の中で、研究チームはこのGRG(カタログ名:MGTC J100022.85+031520.4)を「インカタゾ(Inkathazo)」のニックネームで呼んでいる。アフリカのコーサ語やズールー語で「厄介事」を意味する言葉だ。

巨大電波銀河インカタゾの注釈付き電波強度分布画像(左、Host Galaxyは母銀河でUnrelated galaxyは手前にある無関係の銀河)と、電波スペクトルの年代地図(右)。青緑は年代が若いプラズマ、紫はより年代が古いプラズマを示す(K.K.L Charlton (UCT), MeerKAT, HSC, CARTA, IDIA)

巨大電波銀河インカタゾの注釈付き電波強度分布画像(左、Host Galaxyは母銀河でUnrelated galaxyは手前にある無関係の銀河)と、電波スペクトルの年代地図(右)。青緑は年代が若いプラズマ、紫はより年代が古いプラズマを示す(K.K.L Charlton (UCT), MeerKAT, HSC, CARTA, IDIA)

「インカタゾ」の物理

論文の筆頭執筆者で、南アフリカ・ケープタウン大学の修士課程学生のキャスリーン・チャールトンによると、このニックネームは「この銀河で起きていることの背景にある物理を理解するのが少し厄介」という事実を反映している。

インカタゾは、南ア・北ケープ州にあるミーアキャット国立公園内に設置された64基の電波望遠鏡で構成されるミーアキャット(MeerKAT)干渉計を用いて発見された。電波の波長域で輝いているGRGは、電波望遠鏡でしか見つけることができない。

ミーアキャットのような電波望遠鏡の感度の向上に伴い、GRGの発見例がますます増えている。チャールトンは「GRGに関する研究は非常に急速に進展しているので、ついていくのが大変になっている」として「信じられないほどワクワクする!」と話した。

極限の科学

論文の共同執筆者の1人で、南ア・プレトリア大学のチティズ・トーラットは、今回の発見を「心躍る予想外のことだ」としている。GRGの観測史上最高解像度のデータにより、銀河団内の銀河間空間におけるプラズマジェットと高温ガスの間で、現在の理解を超えた複雑な相互作用が起きていることが明らかになった。「既存のモデルに疑問を投げかける今回の発見は、これらの極限的な銀河で作用している複雑なプラズマ物理に関する理解がまだ不十分であることを示唆している」とトーラットは指摘している。
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翻訳=河原稔

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