研究チームは、遠方にある初期宇宙の銀河をアルマ望遠鏡で観測したデータの分析から、巨大な楕円銀河の誕生の現場を発見した。これは、巨大楕円銀河がどのようにして形成されたかに関する新たな手がかりを提供するものだと、研究チームは指摘している。
現在の宇宙における銀河の形態は2つに大別できる。太陽系が属する天の川銀河(銀河系)のような平坦な円盤状の渦巻銀河と、「膨らんだラグビーボール」に似た楕円体状の構造を持つ楕円銀河だ。前者は星形成が活発で若い星が誕生している一方、後者は非常に古い星を多く含む傾向がある。
銀河衝突
学術誌Natureに12月4日付で掲載された、今回の研究をまとめた論文によると、アルマ望遠鏡の観測データの分析により、初期宇宙の楕円銀河が、銀河中心領域における活発な星形成によって形成されたことを示す証拠が見つかった。銀河同士の衝突と大量の冷たいガスの流入が起こることで、活発な星形成が引き起こされた可能性が高いという。論文の共同執筆者で、サウサンプトン大のアナグラジア・プリージは「2つの円盤状銀河同士が衝突することにより(星形成の燃料となる)ガスが銀河中心領域に向かって流入し、膨大な星が新たに形成された」と説明した。
初期宇宙の銀河
研究チームは、多くの銀河で活発に星が形成されていた約80億~120億年前の初期(遠方)宇宙にある、星形成が活発で非常に明るい銀河100個以上について、アルマ電波望遠鏡の観測データを分析。銀河から放射される電磁波の分布を、最新の解析手法を用いて詳細に調べた。スターバースト
論文の筆頭執筆者で、中国の紫金山天文台のチンホワ・タンは、今回の分析結果について「これは、銀河の楕円体構造が、遠方銀河の中心部での活発な星形成を通じて直接的に形成されることを示す初の具体的証拠だ」と説明している。「天体物理学者は数十年にわたり、この形成過程を理解しようと努めてきた。これらの銀河は、速やかに形成される。ガスが中心に吸い寄せられ、ブラックホールに降着するとともに、スターバースト(爆発的な星形成)を引き起こす。星形成のペースは、銀河系の10~100倍も速い」将来の発見
次の課題は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)、ユークリッド宇宙望遠鏡、中国の宇宙ステーション天宮などで得られた観測データと今回の成果を組み合わせて、初期宇宙の銀河内にある恒星の地図を作成することだ。「これにより、初期の銀河形成をより完全に理解できるようになるとともに、宇宙の誕生以降に宇宙がどのように進化してきたかに関する理解が深まるに違いない」とサウサンプトン大のプリージは話している。(forbes.com 原文)