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宇宙

2025.02.01 09:15

宇宙で食べるご飯は紫色に? 過酷な環境に耐える米を特定

shutterstock

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月や火星で大勢の人が長期滞在して活動するようになると、食料をどう確保するかが問題になる。世界では宇宙での食糧自給自足の研究が行われているが、その有力候補となる穀物が見つかった。

岡山大学資源植物科学研究所は、福岡工業大学、東京薬科大学と共同で、宇宙で穀物を栽培する研究を進めているが、このほど、宇宙放射線にも負けずに長期保存が可能な米を発見した。ダイエットの強い味方として人気の高い雑穀の一種、紫米だ。

研究グループは、2020年、ジャポニカ種イネの同質遺伝子系統で無色素の種子(白米)と紫色素変種の種子(紫米)を使って実験を開始した。これらをサンプルプレートにセットして国際宇宙ステーションに送り、日本実験棟の暴露部プラットフォームに設置して強力な太陽光線や宇宙放射線を浴びせた。440日後、それを地球に持ち帰り、乾燥した摂氏4度の場所で保管されていた同じ種子との比較を行った。サンプルプレートは2層構造になっていて、上層と下層はアルミホイルで仕切られている。上層の上には透明な窓があり、一部の電磁波が透過するようになっている。
ジャポニカ種イネの同質遺伝子系統で無色素の種子(左)と紫色素変種の種子(右)。

ジャポニカ種イネの同質遺伝子系統で無色素の種子(左)と紫色素変種の種子(右)。


その結果、上層の種子は、白米は茶色に変色したが、紫米は変化を確認できなかった。重量は、宇宙の種子が地上で保管していたものと比べて大幅に減っていた。吸水5日後の発芽率は、白米は上層と下層の平均が45パーセント(地上は90パーセント)。それに対して紫米は平均90パーセントと高かった(地上は100パーセント)。どちらも上層は割合がずっと低い。また、発芽してから正常に成長する育成率でも、白米が平均約43パーセントだったのに対して、紫米は約78パーセントと高い割合を示した。

宇宙では、放射線や深紫外線などが直接当たるため、植物内で活性酸素種が発生して酸化ストレスを引き起こしてDNAや細胞にダメージを与えるが、紫米に多く含まれるアントシアニンが遺伝子を保護すると研究グループは考えている。

研究グループは、2007年に行った大麦種子の宇宙暴露実験を経て、その種子の子孫を使い、サッポロビールの協力で宇宙ビール「Space Barley」(スペースバーレイ)を醸造し限定販売したことがある。今回の実験成果をまとめた論文の筆頭筆者である岡山大学の杉本学准教授は、「宇宙で『とりあえずビール!』に加え『〆のお茶漬け、おにぎり』を楽しめることに一歩近づけたと思っています」と話している。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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