TOEIC890点でも「着物の帯の構造が説明できない」
まずは筆者の英語レベルと学習遍歴について触れさせていただく。日本で生まれ育ち、学生時代は詰め込み式受験英語を学んだ筆者は、読み書きリスニングはある程度こなせる典型的な日本人英語学習者だ。海外旅行はすべてサバイバル・イングリッシュ&笑顔で乗り切り、卒業後に元国営企業に就職すると、英語とは縁遠い日々を送る。しわ寄せがきたのが、ワインの仕事を始めた30歳手前になってからだ。海外の生産者とのコミュニケーションに英語を使う必要性が出てきたため、WSETという英国のワイン資格の勉強を通してワイン英語を学び、仕事で最低限のやり取りはできるようになった。だが、いざ踏み込んだ話をしようとすると、言葉が出てこないのだ。「これではだめだ」と約2年前に大枚をはたいて英語コーチングに申し込み、毎日1時間半の勉強を3カ月続けると、TOEICの点数こそあがったものの(890点)、コーチングが終了したら英語の勉強も途絶えてしまった。
最後のチャンスとばかりに短期留学を決めたのは、ある出来事がきっかけだ。仕事で海外のワイン生産者をアテンドしていた際、「着物の帯ってどんな構造になっているの?」と聞かれたのだが、うまく答えられなかったのだ。自分自身、着物が好きでよく着ているにも関わらず、自国の文化を説明できないことが悔しかった。
行くと決めたらすぐさまエージェントや学校のリサーチをはじめ、航空券を取ったのが留学の約5カ月前だ。期間は3週間。フリーランスとはいえ、家庭の都合もあり、家を空けられる最長期間だった。
フィリピンを選んだのにはいくつか理由がある。最大の理由は費用が安く抑えられること。今回留学にかかった費用は、渡航費から現地小遣いまで全て含めて約34万円で、これは欧米諸国に比べると相当にリーズナブルだろう。またフィリピンの学校は、1日に受講できるコマ数が多い&マンツーマンクラス主体のためみっちり勉強できるのも、長期滞在ができない筆者にはありがたかった。さらに筆者の行ったクラークという町は欧米人が多く住んでおりネイティブ講師が在籍していること、比較的治安が良くセブ島のように遊びの誘惑が少ないのも決め手となった。
