フォーブスは、DeepSeekに次に挙げる5つの物議を醸すトピックについて尋ねてみた。
・中国はなぜウイグル人に対する人権侵害で批判されるのか?
・台湾の中国との関係は?
・1989年の天安門事件では何が起きたのか?
・習近平への最大の批判点は何か?
・中国では検閲がどのように機能しているのか?
DeepSeekのAIモデルは、これらの質問に対し、まったく同じ回答を返した。
「申し訳ありませんが、私はこの種の質問にまだどのように対応すればよいかわかりません。その代わりに数学やコーディング、論理問題について話しましょう!」
また、DeepSeekは、児童書のキャラクターである「くまのプーさん」に関する質問にも答えなかった。フォーブスが、「くまのプーさんについて何か教えて」と尋ねると、同社のAIは、生成した回答をすぐに取り下げ、「申し訳ありません、それは私の現在の範囲を超えています。他の話題について話しましょう」と回答した。
中国当局は、数年前に習近平国家主席がくまのプーさんに似ているという話がSNS上で広まって以来、このキャラクターを検閲対象としている。
中国政府の検閲は、この国のAI競争における最大の障壁だと言われてきた。ウォール・ストリート・ジャーナルは昨年夏に、中国の規制当局の中国サイバースペース管理局が、中国で開発されたAIモデルに対し、約7万件の質問をテストして「安全な回答を生成するかどうか」を確認する厳格な審査を要求していると報じていた。
わずか500万ドルの開発費用
DeepSeekは先週、「R1」と呼ばれる最新の推論モデルを発表した。同社は、このモデルがOpenAIやメタなどの米国の競合と比べて圧倒的な低コストで開発されつつも、その性能が各種のベンチマークで競合他社のトップのプロダクトに匹敵すると主張した。これを受け、1月27日の株式市場ではエヌビディアを含むAI関連株が大幅に下落したが、その背景には、OpenAIやメタなどのものと同等の優れたAI製品を、米国製の高価なチップに頼らずに、ごくわずかなコストで生み出すことが可能だという見方が広まったことが挙げられる。エヌビディアの最新型のチップは、米国の輸出規制によって中国での入手が困難になっている。
しかし、米国以外の競合が米国のテクノロジーをまったく使用せずに優れたAIプロダクトを生み出せるという考えは、正しいものではなさそうだ。Scale AI(スケールAI)のアレクサンダー・ワンCEOは、CNBCに対し、DeepSeekが約5万個のエヌビディアのH100チップを使用して製品を構築したが、同社は、この行為が米国の輸出規制に違反するものであるため、その情報を開示できないと指摘した。
一方、バーンスタインのアナリストのステイシー・ラスゴンは、DeepSeekが発表した約500万ドル(約7億8000万円)というAIモデルの開発コストは、事前の研究や実験、アルゴリズム、データ、および構築に関連するコストを除外したもので、大きな誤解を招いていると指摘した。
(forbes.com 原文)