一度聞いたら忘れられない社名のAI企業が、大型の資金調達を実現して世界を驚かせた。SF的な世界と現実のギャップを埋める──。日本発のAI企業が考えるAIの未来とは。
2024年晩秋、都内にあるシェアオフィスは、スーツ姿やカジュアルな格好をしたビジネスパーソンで賑わっていた。そこにオフィスを構えるデイビッド・ハは、賑やかなロビーを見回して言った。
「アートからアカデミアまで、いろいろな業界のかたと会えて面白いんですよ。新しいアイデアにもつながります」

同社は、24年1月にシードラウンドで、米ベンチャー投資会社(VC)のLux CapitalとKhosla Ventures、NTTグループ、KDDI、ソニーから3000万ドルを調達。シリーズAではNVIDIAをはじめ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループ、NEC、SBIグループ、第一生命、伊藤忠グループ、ANAホールディングス、東京海上日動などから約300億円を調達し、評価額2250億円のユニコーン(評価額が10億ドル以上の未上場企業)へと成長した。
当然、世界中から入社希望者が殺到しているが、サカナAIは少数精鋭主義を取るため、創業者たち自身で手を動かさなくていけないこともある。バックエンド機能の付いたシェアオフィスは便利だという。それに資金も節約できる。
「お金は人材に使いたいので」(ハ)
自社ロゴもハの手作りだ。一匹の赤い魚が、黒い魚の集団とは逆の方向へ向かって泳いでいる。これには、主に二つの意味が込められている。一つは、小さなAIモデルを使って大きなパフォーマンスを発揮するというサカナAIの決意。
もう一つは、集団思考に同調することなく、主体的に行動しようとする意思表示だ。同社は「進化型メタ最適化」という手法を用いて、基盤モデルを進化させている。これは、生物の進化を模倣し、AIモデルを自動的に改善する手法であり、研究開発のコストを大幅に削減できる。
