エヌビディアの株価は、27日に17%下落し、1日の下落率としてはコロナ禍初期の2020年3月中旬以降で約5年ぶりの大きさを記録した。同社の時価総額は、1日で5890億ドル(約91兆2000億円)の減少となり、単一銘柄の1日の時価総額の減少額として史上最大を記録した。
この株価の急落により、エヌビディアは世界で最も時価総額が高い企業の地位を失った。同社の時価総額は、3兆5000億ドル(約542兆6000億円)から2兆9000億ドル(約449兆7000億円)に減少し、アップルやマイクロソフトを下回ることとなった。
エヌビディア株は、この日の市場全体の下落を牽引し、S&P 500は1.5%安、ハイテク株が多いナスダックは3.1%安を記録。また、他の主要なAI技術プロバイダーのArmやブロードコム、オラクルなどの株価も10%以上下落している。
エヌビディアの広報担当者は、27日午後の声明でDeepSeekについて「米国の輸出管理規制に完全に準拠した上で、優れたAIモデルを実現した」と述べた。また、この会社が「依然として大量のエヌビディア製GPUを必要としている」とコメントした。
DeepSeekの大規模言語モデル(LLM)の性能の高さは、米国のこの分野における優位性に疑問を投げかけているが、同社のAIモデルが競合製品と同様にエヌビディア製チップに依存していることを考えれば、同社の躍進は、エヌビディアにとって必ずしも悪材料にならないだろう。
しかし、中国企業であるDeepSeekは、このAIモデルの開発に用いたエヌビディア製チップのコストが、わずか560万ドル(約8億7000万円)だったと述べている。一部の専門家は、この金額が大幅な過小評価だと指摘したが、それでも同社が圧倒的な低コストで優れたAIモデルを実現したことは、エヌビディアの将来に疑問を投げかける。
2022年に48億ドル(約7450億円)だったエヌビディアの純利益は、2024年には推定667億ドル(約10兆3500億円)へと急増したが、その背景には、OpenAIやメタなどの米国企業の間で同社の高価なGPUの需要が高まったことが挙げられる。しかし、もし米国のハイテク大手がDeepSeekから学び、より低いコストでAIシステムを設計する方法を見つけた場合、それはエヌビディアにとって「喜ばしい展開にならない」と、ヤルデニ・リサーチの創設者のエド・ヤルデニは顧客向けのメモで指摘した。
エヌビディアのジェンスン・フアンCEOの保有資産は、フォーブスの最新の推計で27日に約210億ドル(約3兆2600億円)減少して1031億ドル(約16兆円)となった。エヌビディアの最大の個人株主であるファンは、同社の株式の3%を保有している。
(forbes.com 原文)