第2特集では「日本発AIスタートアップ50選」を初公開!AI分野へ投資しているベンチャーキャピタルからの推薦を経て、革新性、市場性、成長性、チーム力、調達力の5つの基準をもとに編集部で選出した。今、注目すべき企業たちとは。
「AIバブル」が囁かれ、海外トップ勢が熾烈なリスクマネー合戦を繰り広げる昨今。日本のAIスタートアップが目を向けるべきポイントは。そしてAIビジネスの行方は。
「日本のAIスタートアップが世界を制することは、ほとんど不可能に近い」──。日進月歩で技術革新が進み、「ChatGPT」をはじめ生成AIの商用利用が世界的に加速。米国をはじめ投資マネーも加熱するなか、国内ベンチャーキャピタル(VC)の投資家たちは、おおよそ一歩引いた冷静な視線で現在のAI市場を俯瞰している。
理由は明白だ。AIの技術スタックはインフラ、基盤モデル、アプリケーションの3層に大きく分けられるが、その本丸として目下、世界で開発競争が激化している生成AIの基盤モデルでトップ級の会社を創出するハードルは極めて高いからだ。
AIモデルは、データセット、計算資源、パラメーター数の規模が大きいほど性能が向上する「スケーリング則」の考え方が主流。基盤モデルで世界トップを争うOpenAIやAnthropicなどは、巨額の資金投下による規模の追求で優位性を確保している。
結果として、ChatGPTがリリースされた2022年から数年で生成AIは急速にマルチモーダル化が進み、24年12月には、OpenAIが1分間の動画生成が可能なAI「Sora」の提供を開始するなど、驚異的スピードで進化が続いている。
実際、資金調達額を比べれば海外勢との差は歴然だ。スタートアップ投資はここ数年、世界的に低調にあるなか、AIは異様に投資熱が加速し、海外では10億ドル級の調達案件も珍しくなくなった。24年には、米Databricksが100億ドル、OpenAIが96億ドルなど、日本円換算で兆円規模の調達事例も。
これに対し、日本ではSakana AIがシリーズAで300億円を調達し話題になったが、他企業はせいぜい数十億円程度。スタートアップ全体の調達総額が1兆円に満たない日本が、海外トップ勢に真っ向から対抗するのは現実的ではない。

そもそも、日本はソフトウェア領域で世界的な企業を生み出せていないのが現状だ。過去に照らし合わせれば、今のAIシーンは、10年ごろからクラウドが普及した流れに似たところがある。クラウドでは、結果的にAWSやMicrosoft Azureなど外資大手に基盤(IaaS)を握られ、国内プレイヤーの主戦場になったのは、クラウド基盤上での高付加価値なアプリケーション(SaaS)開発や、差別化されたニーズに応えるインプリメント・導入支援の提供だった。
AIでも、インフラや基盤モデルで競うプレイヤーは安全保障関連や業界特化型などの少数に限られ、大部分はアプリ開発や導入支援が主体になっている。ジャフコ グループ パートナーの坂祐太郎は、「生成AIには、ホワイトカラーの仕事が代替されるほどのポテンシャルがあるが、現時点でその性能を企業が使いこなすことは難しい。生成AIコンサルとして、そのギャップを埋めるプレイヤーが急速に増えている」と話す。
グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)ディレクターの野本遼平は、「生成AI関連の受託開発や導入支援的な動きをしながら、独自のプロダクトアングルを探している会社が多い。SaaSスタートアップでは、既存プロダクトに生成AIを落とし込んでいく動きが顕著だ」という。
