レジリエンスは八角柱型の無人探査機であり、そのサイズはタテ約2.3m、最大直径2.5m。内部には月面用水電解装置(高砂熱学)、藻類培養実験モジュール(ユーグレナ)など、民間企業や政府機関などから委託された5種類のペイロード(積載物)のほか、ispaceが自社開発した小型月面探査車「テネシアス」も搭載されている。
「粘り強さ」という意味を持つテネシアスは、全長54cm、質量5kgのマイクロローバーであり、自走しながらHDカメラで月面を撮影し、その画像をルクセンブルクのispace欧州支社に転送する。また、テネシアスは車体前部に搭載されたスコップでレゴリス(月の砂)を採取するが、その所有権はNASA(米航空宇宙局)に売却される。ただし、それを地球へ持ち帰る予定は現時点ではない。
「史上初」だらけのミッション
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マイクロローバー「テネシアス」によるミッションは「ベンチャー」と呼称され、その行程は5段階に区分される(c)ispace
ispaceが2023年の1回ミッションに成功していれば、そのランダーは日本初の月着陸機、さらに世界初の民間月着陸機になるはずだった。しかし、その着陸に失敗したことにより、「日本初の月面着陸機」の名誉はJAXAの「SLIM」(2024年1月20日着陸)に、「世界初の民間月面着陸機」の称号は、米インテュイティブ・マシーンズの「ノバC」(同年2月22日着陸)に譲ることになった。ただし、今回のミッションに成功すればレジリエンスは「日本初」、強いては「アジア初」の民間月着陸機として記録される。
今回のミッションでは「史上初」の試みが多い。1機のロケットによって2社の月面探査機が打ち上げられたのは今回が初めてであり、「寒さの海」に着陸するのもレジリエンスが史上初。レゴリスのNASAへの販売は、月資源における世界初の国際商取引になる。