ロシアが続けている容赦のないドローン攻撃はウクライナに甚大な損害を与えており、これまでにウクライナの発電能力の4分の3がドローンやミサイルによる攻撃で失われたと推定されている。一方、ウクライナも防空能力を着実に向上させていて、11月には銃砲撃やミサイル、あるいは電子戦システムによるジャミング(電波妨害)で、飛来したドローンのおよそ95%を撃墜するか墜落させている。最近は電子戦による戦果が増えている。
だが、防御が進化すれば攻撃もまた進化する。
シャヘドの進化
現在使われているシャヘドは、2年あまり前にウクライナで初めて目撃されたものから数世代進んでいる。この間、探知をより難しくする「ステルス」コーティング、目標に合わせて調整した一連の新型弾頭、ウクライナの携帯電話網を通じてデータ通信を行うためのSIMカード付きモデムなどが採用された。オリジナルのシャヘドも基本的な衛星航法システムを搭載していたが、ロシア製シャヘドはジャミングやスプーフィング(なりすまし)に強いコメータ(コメット)軍用航法システムにアップグレードされている。もっとも、ウクライナ空軍の報告では電子戦によって墜落したり、ロシア側などに舞い戻ったりするシャヘドが増えており、このシステムによる保護は破られているもようだ。それを踏まえれば、ロシアが衛星航法にまったく頼らないシャヘドを目指していても驚くに当たらないだろう。
一部のシャヘドが基本的なビデオカメラを搭載していることは以前に知られていた。部品にサーマルイメージングカメラが含まれるというHURの報告どおりなら、現在のシャヘドは、暗闇の中でも熱情報によって地形の特徴を認識し、夜間も機能する視覚航法システムを用いているということなのかもしれない。