これは、現実の自然の基本的事実に関する天文学者の理解の中に明白な欠落があることを意味する。
不完全な理解
天文学誌The Astrophysical Journalに6日付で掲載された今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ特別教授およびトーマス・J・バーバー教授で2011年ノーベル物理学賞受賞者のアダム・リースは「宇宙の膨張速度の観測値と標準モデルの予測値との間の食い違いは、宇宙に関する理解が不完全である可能性があることを示唆している」と指摘している。「NASAの主力望遠鏡2基が互いの観測結果を裏づけ合っている状況にあっては、この(ハッブルテンション不整合)問題を極めて真剣に受け止めなければならない。これは難題であると同時に、宇宙についてより多くを知るための途方もない機会でもある」「ハッブルテンション」とは
HSTによる膨張速度の測定値がJWSTによって裏づけられたことは、天文学にとってとてつもなく大きな意味を持つ。また、宇宙膨張の法則「宇宙は一様かつ等方的に膨張しており、銀河の後退速度と銀河までの距離は比例する」は、HSTと同じく米天文学者エドウィン・ハッブルにちなんで「ハッブル・ルメートルの法則」と命名されているため、少しまぎらわしくなっている。ハッブル・ルメートルの法則の比例定数「ハッブル定数」については、宇宙論の標準モデルから導く方法で、67~68km/s/Mpc(メガパーセクは100万pc、1pcは3.26光年)の値が求められている。実質的にこれは宇宙の膨張率を表している。しかしながら、望遠鏡による観測では、70~76km/s/Mpcと、これより大きな値が得られている。
2つの値の違いは、測定や観測技術の誤差や不具合だけでは説明できないほど大きい。