天文学誌Astronomy & Astrophysicsに掲載された観測結果をまとめた論文では、異なる赤方偏移(距離の指標、遠方ほど時間を遡った宇宙)にある銀河の星間物質を比較し、宇宙時間にわたって星間物質がどのように変化したかを推定した。
論文の共同執筆者で、デンマーク・コペンハーゲン大学ニールス・ボーア研究所の天体物理学者アニャ・C・アンデルセンは、自身のオフィスで取材に応じ、今回の研究では基本的に次のような疑問を追究したと語った。それは、星間物質中の塵粒子を形成するのに利用可能な元素の相対存在量が、初期宇宙と現在の銀河系とで同じなのかどうかという問題だ。
ESOのVLTの観測データを主に用いた今回の研究では、塵の形成が、これまで考えられていたよりもはるかに宇宙の初期段階で起きていたことが明らかになった。
米航空宇宙局(NASA)のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)も、今回の研究結果を裏付けている。
この問題については、ほんの10年ほど前に尋ねられたとしたら「初期宇宙に大量の塵が存在するならば、その前にまず数世代続く恒星と、寿命が数百万年の星が多数必要だ」と答えていただろうとアンデルセンは話す。アンデルセンによると、塵がなければ初期に惑星は存在しないはずだが、予想よりもはるかに早い時期に、はるかに多くの星間塵が存在していることが判明したのだ。宇宙が誕生したビッグバンから数億年以内には、地球に似た惑星を形成できるほど十分な量の塵が存在していたようだという。
これは、宇宙に存在する可能性のある生命が、そして知的生命体でさえも、約120億年前に遡る、かなり早目のスタートを切っていた可能性があることを意味する。そして星間塵は、この全てにとって不可欠なものだった。