宇宙

2024.06.12 18:00

惑星系の形成理論を揺るがす新説、「星間媒質との関連」が鍵に

南米チリのアタカマ砂漠にあるアルマ(ALMA)望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)の夜間の様子(Sangku Kim/ESO)

南米チリのアタカマ砂漠にあるアルマ(ALMA)望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)の夜間の様子(Sangku Kim/ESO)

惑星系の形成に関する従来の理論では、惑星は星形成の副産物にすぎないと長年見なされている。低温で濃密な分子雲が崩壊し、回転するガスと塵(固体微粒子)の円盤になり、ここから恒星と惑星が比較的孤立した状態で形成されると考えられている。

星形成の場となる分子雲の崩壊を誘発する原因は、分子雲の自己重力から、近くで発生した超新星が引き起こす衝撃波、他の分子雲との衝突までさまざまだ。星形成は宇宙の初期から行われているプロセスであり、スペクトル型G-2の黄色矮星の太陽が約45億6000万年前にたどった可能性が高いシナリオなのだ。

だが、天文学誌The Astrophysical Journalに掲載予定の最新論文によると、惑星系の形成では、星間媒質(星間空間に存在するガスや塵などの星間物質)からのガスと塵の継続的な流入が、これまで考えられていたよりもはるかに大きな役割を果たしているという。今回の論文は、コンピュータシミュレーションと数値計算に基づいているが、研究のきっかけとなったのは、南米チリ北部に設置されている、欧州南天天文台(ESO)などが運用する大型電波干渉計アルマ(ALMA)望遠鏡で得られた最新の観測データだ。

アルマ望遠鏡によって、太陽系近傍の複数の星形成領域で、原始惑星系円盤に物質が流入している証拠が明らかになっていると、論文の筆頭執筆者で、フランス・コートダジュール天文台の天文学者のアンドルー・ウィンターは、取材に応じた電子メールで述べている。これは、物質流入のプロセスが広く起きていることを示唆していると、ウィンターは指摘している。

論文によると、従来の惑星形成モデルでは、原始星の崩壊収縮中に原始惑星系円盤が形成され、この孤立した恒星円盤系の物質から惑星が成長すると想定している。だが、星間媒質の降着が、原始惑星系円盤の進化の促進で重要なプロセスとなっていることを、今回の研究で明らかにしたと、論文は指摘している。

論文によると、円盤内の物質は、円盤が存続している間は常に補充されている。論文の推計によると、実際に円盤全体の20~70%は、円盤の存続期間の後半に捕捉された物質で主に構成される。

今回の論文の重要なポイントは、星形成初期の若い惑星系が星間媒質と密接に結び付いていることにある。この関連性については、従来の研究では評価されていなかった。

ウィンターによると、原始惑星系円盤はかなり早い段階で、原始星と同時期に形成された後、孤立した状態で進化すると、通常は考えられている。今回の論文ではこの通説とは対照的に、星間媒質のガスと塵を捕捉することで、円盤の物質が常に補充されることを示しているという。

取り込まれる物質は、銀河(直径約数万光年)から個々の円盤(直径約数百天文単位、1天文単位は太陽地球間の距離)までのさまざまな規模にわたる星間媒質の乱流によって補充される。
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翻訳=河原稔

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