高解像度で見る宇宙
JWSTを用いた今回の最新研究では、銀河NGC 4258までの既知の距離を基準点として利用し、セファイド型変光星、Ia型超新星、赤色巨星などが存在する別の複数の銀河までの距離を測定した。JWSTによる極めて高精度の測定の結果、ハッブル定数の値として72.6km/s/Mpcが得られた。これは、同じ銀河に対してHSTで求めたハッブル定数の値の72.8とほぼ等しい。今回の研究に参加したジョンズ・ホプキンス大の大学院生スーヤン・リーは「JWSTのデータは、初めて高解像度で宇宙を見ているようなもので、測定の信号対雑音(S/N)比がかなり向上している」と指摘している。
初期のダークエネルギー
ハッブルテンションが生じる原因を明らかにすることは、天文学者にとって極めて重要になる。なぜなら、宇宙の構造の地図作成や宇宙を誕生させた大爆発ビッグバンの直後に何が起きたかの探究に取り組む中で、ダークエネルギーとダークマターの謎の解明につながるからだ。この2つは、宇宙を形作っているように見える正体不明の物質だ。ハッブル定数の算出に協力したジョンズ・ホプキンス大の宇宙論研究者マーク・カミオンコウスキーは「ハッブルテンションに対する1つの考えられる説明は、初期宇宙に関する現在の理解に何か欠けている部分があるのかどうかだろう。それは例えば、ビッグバン後の宇宙に予想外の動力を与えた物質の新たな構成要素である、初期のダークエネルギーなどだ」と説明している。カミオンコウスキーは最近、ハッブルテンションについて考えられる新たな説明の考案を支援した。「また、この他にも次のような説明案がある。ダークマターの特異な性質、エキゾチック粒子、電子質量の変化、原始磁場などが効果を及ぼす可能性だ。理論研究者は、かなり独創的になってもよいのだ」と、カミオンコウスキーは続けた。
(forbes.com 原文)