宇宙

2024.12.13 14:15

広尾学園高校が人工衛星製作、その悲喜「極寒の LED試験」

自ら設定したミッションの下、人工衛星を作りあげた広尾学園高等学校の生徒たち。(左から)前田昊生、澤村太智、新垣蓮、矢尾海心、藤村ひな乃、青木莉緒(モニターに映る平松彪悟、木本晃一の2名は米国からZoomでリモート参加)、中央はラグラポCEO高野宗之。Forbes JAPAN編集部にて

20キロ先の光を探せ! 極寒のLED試験


矢尾海心:衛星に光通信がついていて、軌道上でLEDを光らせて地上から観測するというミッションがあるんです。

それで、LEDの数や配置の仕方を決めるテストをしました。大気中で20キロくらい先の光が見えれば、宇宙からでも見えるだろうという考え方で、20キロ先のLEDの試験球をカメラの望遠レンズを使って拾うという試験を、忘れたいぐらい何回もやったよね。



前田昊生:最初は彪悟と晃一と俺の3人で長者ヶ崎に行って。

矢尾海心:それから場所を選んで、3人(前田・藤村・青木)は何をしたんだっけ?

青木莉緒:20キロ離れた方に向かってひたすら角度を変えながら、電話で「見えますか?」「あ、見えます!」って確認しながら(笑)。やっているうちに日が暮れて、海だから真っ暗ですごく寒かった。

矢尾海心:僕と太智は、江ノ島のカメラ側にいたんですけど、こっち側からは、海に光が反射して二重に見えて。だから長者ヶ崎はあんまりよくなかったよね。

澤村太智:カメラを構えてカップラーメンを食いながら…。

矢尾海心:僕がガスバーナーをもって行って、お湯を沸かしてカップラーメンを作って。

澤村太智:半分キャンプみたいな感じ。



矢尾海心:それでなんとか見えたので、もう少し遠い海から離れたところでやりたいねということで、木本と平松に城ヶ島に行ってもらって。

木本晃一:城ヶ島は本当に大変でした。最初は江ノ島からLEDが見える角度を探すために夜城ヶ島に行ったんです。海の岩の上に立ってLEDを放ったけど、全く見えなくて。

次は内陸の高台の方に行ったんです。藪の中を歩き回ってやっと江ノ島が見えるところを見つけて。無理やりスイッチのボタンをオンにしたりオフにしたりしながら、「見えた?」「見えない?」と電話で確認しながらやったんです。

LEDの角度調節に四苦八苦!


矢尾海心:僕がLEDの試験機をデザインしたんです。衛星の一部を模した感じのモジュールにLEDをつけてテストしていたんですけど、それが持ちづらいという苦情が来たので、三脚に取り付けられるようにしたんです。その後も蓮と一緒に行ったよね?



新垣蓮:行ったね。3月の夜の海は死ぬほど寒かった。

矢尾海心:海風がヤバくて。カップラーメンとコーヒーと紅茶を入れまくって寒さをしのいだよね。

蓮と行った後、広尾学園のスミス先生にも来ていただいて。先生の望遠鏡に一眼レフをつけて観測したし、うちゅうの矢島さんにも来てもらった。

一度僕がカメラの雲台を忘れてしまって、三脚の上に直接望遠レンズを置いて、八島さんに手で固定してもらって写真を撮るという、めちゃくちゃ危ないことをしたことがありました。

衛星の動きが線状に写るように長時間露光で撮影しようということになって。車の上にLEDを付けて走らせて撮影する実験もしましたが、その試験機を作るのも大変でした。

新垣蓮:2日かけてLEDを点滅させるコードを書いてマイクロコンピュータとLEDの配線を繋いだよね。学校で始めて、僕の家に持って帰って、最後は僕が海心の家に泊りに行って作業して、やっと仕上がったという感じだった。

次ページ > 結局寝ずに、そのまま試験をしに山梨に。

文=久野照美 写真=曽川拓哉 取材・編集=石井節子

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