欧州

2024.11.06 09:30

ウクライナ軍のブラッドレー&エイブラムスがクルスク州で奮戦、だが否めない「場違い」感

Karolis Kavolelis / Shutterstock.com

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ウクライナ陸軍の保有する最も優れた米国製車両のトリオ、M2ブラッドレー歩兵戦闘車2両とM1エイブラムス戦車1両が10月25日ごろ、ロシア西部クルスク州のノービプーチ村のすぐ南にあるロシア側の要塞陣地を突破した。

味方のドローン(無人機)が上空から見守るなか、先導するブラッドレーのペアは発煙弾で煙幕を張り、25mm機関砲で射撃したり、ときに停車してTOW対戦車ミサイルを発射したりしながら前進していった。エイブラムスが後ろに続き、迅速な強襲に重みも与えた。
3両はロシア側からの砲火を意に介さず、国境近くのロシア側陣地の樹林帯のそばまで到達した。ドローンの映像やブラッドレーからの映像を見る限り、ロシア側からの射撃は衰えている。ウクライナ軍でブラッドレーとエイブラムスを運用する唯一の部隊である陸軍の精鋭第47独立機械化旅団は、この小競り合いに勝利したようだ。
とはいえ、この勝利にいったい何の意味があるのだろうか。

ノービプーチはウクライナ東部ドネツク州でのロシア軍の攻勢で焦点になっている都市、クラホベから400kmも離れている。ロシアがウクライナに対する戦争を拡大して2年8カ月半たつなか、ロシア側の国境地帯の小村で第47機械化旅団がたいした意味のない小戦闘に勝利する一方、クラホベの南10kmほどのイルリンカ村では、疲弊したウクライナ空挺強襲軍第79独立空挺強襲旅団がかろうじて防御線を保持している。

イルリンカが陥落すればクラホベも陥落する可能性が高い。クラホベが陥落すれば、ロシア側はウクライナ軍の6個旅団を突出部に押し込めるだろう。突出部、ウクライナのジャーナリストであるスタニスラフ・アセーエフの言葉を借りれば「袋」に囲い込むのは古典的な戦術であり、ロシア軍はここ数カ月、ウクライナ軍にこの戦術を駆使して大きな効果をあげてきた。

アセーエフはこう説明している。「ロシア軍は引き続き『袋』戦術を首尾よく用いている。この戦術は、われわれの陣地に3面から回り込み、退却のための細い『口』だけ残しておくというものだ。この形になると、戦闘態勢にある部隊でさえ、包囲されるのではないかとパニックを起こしてしまうことが多く、それは部隊の撤退につながる」

ウクライナ側はドネツク州中西部のクラホベ一帯を失えば、その北30km弱に位置する要塞都市ポクロウシクで決死の抵抗を余儀なくされるかもしれない。そして、ポクロウシクを失陥すれば、ウクライナ東部の防御線全体が瓦解していくおそれがある。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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