欧州

2024.10.15 17:00

ウクライナ軍の「吸血鬼ドローン」、夜中に疾走するロシア亀戦車に爆弾を命中させる

Getty Images

ウクライナ軍のドローン(無人機)部隊「ネメシス」(無人システム軍第412独立無人システム大隊)は先週、ロシアが引き起こして2年8カ月近くたつ全面戦争のなかでもとりわけ手際鮮やかな撃破を成し遂げた。

ネメシスのドローンはロシア軍の装甲強化戦車、通称「亀戦車」が疾走しているのを見つけた。操縦士は車両の進行方向に注意深く狙いを定め、擲弾(てきだん)を1発落とす。擲弾は亀戦車の上部の追加装甲を破る。亀戦車はなお走り続けるが、ドローンは車両右前方の無限軌道(キャタピラ)の下に2発目の擲弾を投下する。しかも、これは夜間の戦闘だった。

「わが軍の操縦士はこの上なく優れた腕前を発揮した」と無人システム軍は誇っている。3発目の擲弾は命中しなかったものの、問題ではなかった。損傷した亀戦車は道路から逸れて停車し、乗員3人は壊れた金属製の外殻から這い出て、そそくさとその場を離れている。
ウクライナ軍の無人システム軍、通称「ドローン軍」は世界初のドローン専門の独立軍種で、ボロディミル・ゼレンスキー大統領が今年2月に創設を表明した。現在、監視や攻撃、補給といった各種任務のためにさまざまなドローンを運用している。

ウクライナのミハイロ・フェドロウ副首相兼デジタル変革相は、ウクライナのドローンは「(ウクライナの)戦場の状況を根底から変えた」とし、無人システム軍は技術の進歩を加速させるとの見通しを示していた。

ドローンに夜間行動能力をもたせることは、無人システム軍の優先事項のひとつだ。全面戦争の初期には、ほとんどのドローンはもっぱら日中用のカメラを搭載し、夜間には使い物にならなかった。

昨年末、ウクライナ軍は赤外線カメラを搭載したいわゆる「吸血鬼ドローン」を導入し、独立軍種になる直前のドローン部隊に真の夜間行動能力を初めて与えた。

吸血鬼ドローンは、暗闇を一種の防御手段と考えるようになっていたロシア軍部隊の裏をかき、大混乱に陥れた。擲弾を何発も投下し、駐車中の車両を爆破したり防御施設を破壊したりした。ロシア側はスラブ民話に登場する森の魔女にちなんで、この夜間爆撃ドローンを「バーバ・ヤガ」(ウクライナ語読みなら「バーバ・ヤハ」)と名づけた。
次ページ > AI誘導ではなく人間の操縦士が熟達した腕前を見せた

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事