お互いの「ボタン」を押してしまったり、激しい感情で圧倒し合ったり、なんとかして結びつきを維持しようと奮闘したりするかもしれない。そういう時には、感情の地雷原に足を踏み入れてしまったように感じられるし、一歩間違えれば互いの感情を傷つけ、誤解を招き、対立の長期化につながりかねない。
しかし、こうした困難な時のなかでも、対応の選択肢は常にある。このような重要な局面でこそ、2人の関係の真の強さが試される。相手に引き金を引かれたことに対する反応次第で、対立をエスカレートさせ、相手との距離や相手への強い憤りを生むこともあれば、より深い理解とつながりへの架け橋となることもある。このような状況にどう対処するかは、あなたの現在の感情の状態を反映するだけでなく、相手との関係の未来を形作る。
ここでは、相手に引き金を引かれたと感じたときに、自分の反応を意識的に選ぶ3つの方法を紹介しよう。
1. 視点を変えれば、気持ちも変わる
認知的再評価は、最初の思考を意識的に再構築し、引き金となった状況に対する感情的反応を変える強力なテクニックだ。怒りやイライラがこみ上げてきた、と感じたら、少し時間をとって、その感情の原動力となっている具体的な思考を特定しよう。この思考は現実に基づいたものか、それとも思い込みか、と自問してみてほしい。よりバランスの取れた視点から考えることで、最初の解釈を見直してみよう。例えば、「相手は私の気持ちなど気にしていない」と最初に思ったのなら、一旦立ち止まり、「相手は、それがどれほど傷つく言葉に聞こえたか気づいていなかったのかもしれない」と捉え直す。
こうしたシンプルな心のシフトにより、感情的な激しさを抑え、より穏やかで生産的な会話の舞台を整えることができる。防御的な態度ではなく、好奇心を持って状況に接することが、より良いコミュニケーションを育む。
アーカンソー大学の研究者で心理学者であるジェニファー・ヴェイユは、認知的再評価は貴重なスキルだと強調する。視点を変えたり、物事を別の角度から見たりすることは、我々に多くの恩恵をもたらす重要なライフスキルだからだ。
ただし、感情が高ぶっているときには効果がないかもしれないので、認知的再評価を実践するのは、明確な思考ができているときだけにするように、とヴェイユはアドバイスしている。
ヴェイユは、認知的再評価を効果的に用いる方法について、次のようなアドバイスをしている。
・激しい感情を乗り超える:強い感情が判断を鈍らせることを認識する。感情に圧倒されそうになったら、シャワーを浴びる、ランニングをする、漸進的筋弛緩法を行うなど、感覚的あるいは身体的な活動に集中し、心を落ち着かせる。これらのテクニックは、感情が落ち着くまで、衝動的な行動を抑えるのに役立つ
・冷静になった時に認知的戦略を使う:感情が和らいだら、再評価のような認知的戦略を利用して、見通しを立て、問題解決を図る。ネガティブなことを思いだして反芻し、感情を再び高ぶらせないようにする。そうではなく、経験を振り返り、その経験から学び、感情を建設的に処理する
2. 感情にラベル付けする
感情のラベリングとは、緊張した瞬間に、自分が感じている感情を具体的に特定し、それに名前をつけることだ。感情の引き金を引かれたら、一旦立ち止まって、「私はいま、何を感じているのだろう?」と自問する。それは怒りであったり、フラストレーションであったり、悲しみであったり、あるいはいくつかの感情が入り交じったものであったりする。
自分の感情を確認したら、それを冷静にパートナーに伝えよう。感情にラベル付けすることは、感情に意識的な自覚をもたらすことであるため、感情の激しさを和らげることができる。
例えば、「さっきのことがあって、すごくイライラしている」と言うことで、自分をコントロールして、会話を対立から解決へとシフトさせることができる。こうすることで相手は、非難されたと感じることなく、あなたの気持ちをより良く理解できるようになる。