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2024.08.29 13:45

Figma“中興の祖”が果たした役割に見る「ベテランの力」

Figmaの製品担当バイスプレジデント、ショー・クワモト(桑本 晶) Courtesy of Figma

よかった点は、ユーザーのコミュニティを重視して、彼・彼女たちが製品についてどんなことを言っているか、どんな点が好きで、何が嫌いかを理解しようとしたことです。私自身、電子掲示板で長時間を過ごしたり、ユーザーに直に話を聞きにオフィスへ行ったり、パーティーでつるんだりしましたね。そういったコミュニケーションを大切にしていました。私たちが立てた仮説は、ユーザーがリスペクトしている人に認めてもらえれば、ほかのユーザーにも信頼してもらえるのではないか、というものです。そこで、最も影響力のあるウェブ開発者に、ツールの感想や改善点を聞くことにしました。本当に気に入ってくれるような製品に改良できれば、彼らが他のユーザーに「このツール、かなりいいぞ 」と伝えるでしょうし、他のユーザーも信頼してくれるようになる。その精神は、Figmaにも受け継がれています。
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逆に、後悔していることがあるとすれば、いたずらに機能を加えてしまい、製品を根本から作り直さなかった点です。作り直す手間を惜しんで機能を追加すると、以前からのバグが原因で製品開発がスムーズにいきません。平坦ではない土台の上に機能を加えるから、その新たな土台も歪になり、それが積み重なることで最終的に全体のバランスが崩れてしまいます。製品の多くがそうでした。もう一度やり直せるなら、機能を加えたい誘惑に負けず、土台を立て直すことを優先するでしょう。難しいのは、製品を作り始めたばかりの頃は、できるだけ早く、できるだけ多くの機能を実装することが重要だという点です。

でもよくよく考えてみれば、大切なのは機能を加えることではなく、良い製品を作ることですよね。例えば、素晴らしいクルマについて考えるとき、「このクルマには87もの機能が付いているから素晴らしい!」とは考えません。「車線検出システムを搭載していて、あれもこれもついている」なんて思いませんよね。素材が優れていて、見た目が美しく、運転したときのフィーリングも良いから素晴らしいクルマなのです。それが、「このクルマはガタガタだけれど、87個も機能がついているからな」と思う人はそんなにいないでしょう。それはダメなクルマですよね?(笑)

だからFigmaでは、製品を作り続け、磨き続け、そのレベルも上げ続けることで、より良く、より早く、より信頼してもらえるような製品にしたいのです。すべてがユーザーの期待どおりに機能するように──。ただひたすら新製品や機能を追加し続ける誘惑に負けないことです。ただ、簡単ではありませんよ。顧客がそれを求めていることもありますからね。
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──それでも、「少ないほうが質が上がる」ときもある、と。

クワモト:そういうことです。でも、頭で理解するのは簡単なんですよ。これを実行するのが難しい。
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文 = 井関庸介

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