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2024.08.29 13:45

Figma“中興の祖”が果たした役割に見る「ベテランの力」

──スケールしたスタートアップの課題の一つに、「製品のゼロからの立ち上げ(0→1; ゼロイチ)」の難しさがあると思います。課題意識が明確で、社員もリソースも少ないときは、選択肢が少ないことが良いほうに作用してフォーカスできると思いますが、社員が多様化し、応えるべき市場も広がると、優先順位をつけることが難しくなるかと。Figmaの共同創業者であるディラン・フィールドCEOも、Forbes JAPANとのインタビューで“自動車王”ヘンリー・フォードの名言を引き合いに、確立された会社が「ゼロから何かを作り上げる」ことの難しさについて話していました。「何が欲しいかと尋ねたら、人は“もっと速い馬”と答えただろう」という言葉ですね。Figmaも急成長を続けているわけですが、こうしたゼロイチの意識を社内で持ち続けるために、どのような工夫をしているのでしょうか。

クワモト:くわしくは話せないのですが、じつは開発中の新製品があって、そのチームには他のチームとはまったく異なるルールを適用しています。メインのチームでは、デザインするものはすべて、階層ごとの然るべき承認プロセスを通さなくてはいけません。デザイナーじゃなくても、自分の上司や、そのまた上司にアイデアや製品をチェックされるのが好きという人はいないでしょう。ふつうはいませんよね(笑)。しかし私たちのように複雑で、さまざまな機能が互いに深く結びついている製品開発には、それが唯一の方法だと考えています。機能や変数、カラーピッカー、オートレイアウトが決まった方法で動作するわけです。そのすべてが同じように有機的に機能しなければならない。あれだけに集中しているチームや、これだけに集中しているチームに、好き勝手な変更をさせるわけにはいきません。全体から見て、うまく動作する必要があります。

一方で、新製品開発チームも変更を加えたいわけです。しかも、彼・彼女らが加えたがっている仕様変更の多くが、私が内心で「おいおい、いくらなんでもそれはムリだよ。うまくいくわけがない」と思うものばかりだったりします(苦笑)。でも、その段階では何も言いません。新製品開発チームにだって試行錯誤するスペースが必要だからです。そのチームには、まずは自分たちが正しいと思うことをできるだけ速くやってみなさい、と伝えています。修正しなければならないものがあれば後で直そう、と。だから、新製品開発チームは他のチームと動きかたがまったく異なるのです。
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文 = 井関庸介

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